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Documentary #Art #Movie

演じることで生み出せる“価値”は何か
役者・河合優実の心にいつもある多様性とは

2022.05.20
河合優実(かわいゆうみ)
取材・文:山西裕美(ヒストリアル)
撮影:屋山和樹(BIEI)
スタイリスト:吉田達哉
ヘア&メイク:上川タカエ(mod's hair)
河合優実(かわいゆうみ) 2000年生まれ。東京都出身。2019年デビュー。2021年出演『サマーフィルムにのって』、『由宇子の天秤』での演技が高く評価され、第43回ヨコハマ映画祭<最優秀新人賞>、第35回高崎映画祭<最優秀新人俳優賞>、第95回キネマ旬報ベスト・テン<新人女優賞>、第64回ブルーリボン賞<新人賞>、2021年度全国映連賞<女優賞>を受賞。2022年は『ちょっと思い出しただけ』、『愛なのに』、『女子高生に殺されたい』、『冬薔薇』(6月3日公開)、『PLAN 75』(6月17日公開)、『百花』(9月9日公開/川村元気監督)、『ある男』(秋公開予定)、ドラマ「17才の帝国」(NHK)などに出演。
2022年、7本の出演映画作品が公開予定の河合優実さん。その演技力の高さや存在感に、多くのクリエーターや映画ファンが注目している。学生時代のダンス部での経験から「舞台に立ちたい」という気持ちが芽生えたという河合さんの、“本望”とも言えるのが舞台出演。デビュー4年目に突入した2022年5月、松尾スズキ作・演出の“傑作悲劇”『ドライブイン カリフォルニア』に出演する21歳の河合さんが、今実感している役者という仕事、表現者としてのこれからについて聞いた。

演じた作品の評判が、どう役者に戻ってくるのかを知った

2019年2月に俳優デビュー。2021年公開の映画『由宇子の天秤』では複雑な事情を抱える女子高生を演じ、第95回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、第43回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第64回ブルーリボン賞新人賞など、数々の賞に輝いた河合優実さん。河合さんの演技がスクリーンに残す印象は鮮烈で、作品を観た人誰もが「あの子は誰?」と注目する魅力を放っている。2022年は『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『冬薔薇(ふゆそうび)』『PLAN 75』など、実に7本の出演映画が公開予定だ。

「バラバラの時期に撮影していたものがまとめて2022年に公開されている感じなので、ずっと忙しかったという感覚ではないのですが、振り返ればたくさんのものに出合っていたんだなと、今感じています」

デビュー4年目。出演作がひしめく2022年は、早くも印象に残る年になるのでは。

演じた作品の評判が、どう役者に戻ってくるのかを知った

「終わってみないとわからないですね。2021年は『由宇子の天秤』『サマーフィルムにのって』などが公開されましたが、撮った映画が公開されるといろんな方々から感想をいただいて、『演じる側には、こんなふうに返ってくるんだ』というのを感じました。撮っているときはこんなに幅広い年代の方に観ていただけるとは想像していなかったですね。なので、2022年の反響も予想はついてないです」

『由宇子の天秤』では中年の塾講師を相手に妊娠、『女子高生に殺されたい』ではアスペルガー症候群の人物を、『愛なのに』では大人の男性に激しく片思い……と多様で個性的な女子高校生を演じた。

「デビュー1年目は、性格的に内に向かっていく役柄が多かったですね。こういう体験ができるのは貴重だとも思うようになりました」

個性的な役柄を演じることが多いからか、自身も「変わった人」と想像されることもあるのだとか。そんな河合さんは、自分ではどんな人間だと思っているのか。

「自分ではわからないです。知りたいですね、自分がどういう人間か。でも他の方から最初に言われるのは『静か』というイメージ。でも家族や仲の良い友だちには、『うるさい』と言われます。すぐ歌ったり踊ったり、ふざけたりしちゃうんで(笑)」

人気舞台の再再演という歴史を受け止めつつ、自分なりに演じたい

芝居をやりたいと思ったのは高校で所属していたダンスで、舞台に立つ楽しさを知ったことがきっかけ。2020年末、自身2度目の舞台出演となった、「大人計画」を主宰する松尾スズキ書き下ろしのミュージカル、COCOON PRODUCTION 2020「フリムンシスターズ」は、衝撃的だったそう。

人気舞台の再再演という歴史を受け止めつつ、自分なりに演じたい

「宮藤官九郎さんや星野源さんが出演されていたことから、大人計画を知ったのですが、その主宰者である松尾スズキさんの舞台に出演できるというのは、信じられないし夢のようでした。出演しているモンスター級にすごい俳優さんたちが、楽しそうに苦しそうに本気で舞台をつくっていく姿を目の当たりにして、ものすごい衝撃を受けましたね。このとき出演者の中でも私は一番年下だったので、プレッシャーや緊張ももちろんあったのですが、楽しみのほうが大きかったです。毎日舞台に立てるということがとにかくうれしくて、“ご褒美”みたいな感覚でした。コロナ禍でしたし、スタッフの方々は心配ごとがたくさんあったと思うのですが、私だけこんなに楽しくていいのかな、って思ったくらいでした(笑)」

それから1年半の月日を経て、河合さんは再び松尾スズキ作・演出の舞台、日本総合悲劇協会VOL.7『ドライブイン カリフォルニア』に出演することになった。松尾さん独特の世界観を持つ台本は、読み解くのに大変だったのでは?

「3年間映画をどっぷりやってきて、4年目のタイミングでまた舞台に戻って来られたのがうれしいです。私が舞台をやらせていただくのは3回目なんですが、どちらかといえば、舞台よりも映画の脚本を読むほうが難しいですね。舞台の台本は言葉だけで物語を紡げていけるようにできていて、それだけで戯曲という文学として成立しているんです。でも、映画は映像で語る部分が大きいので、シナリオから形になる可動域がそもそも広すぎるというか。松尾さんの書かれるセリフは独特で、言い回しやリズムに独特の“色”を感じて、とても気持ちいいですね。私の体に合っている気がして、覚えやすいです。もともと『舞台に立ちたい』という気持ちから役者になったので、物怖じしないタイプだとは思うんですけど、1年目2年目のほうがより度胸があったかも。この3年間で経験を積んだことで逆に怖くなってきた部分もあるので、そこを捨てながらやっていきたいです」

『ドライブイン カリフォルニア』は、1996年、2004年にも上演され、2022年の公演は3回目、18年ぶりの再再演。地方のドライブイン「カリフォルニア」で繰り広げられる、悲しさとおかしさが混じり合った“悲劇”のストーリー。河合さんは、ここで働くアルバイトスタッフのエミコを演じる。

人気舞台の再再演という歴史を受け止めつつ、自分なりに演じたい

「2004年の舞台映像を観させていただいたあとに台本を読んだのですが、このときエミコ役を演じていた小池栄子さんの声で再生されてしまって(笑)。2022年度版の『ドライブイン カリフォルニア』をお届けするという前提はわかっているのですが、今はまだ小池さんの影がチラついていますね。観た記憶は消せないので、声やトーンには小池さんに影響された感じが出ちゃうかもしれない。ある程度は仕方ないと割り切っているし、それが面白いところかもしれないですね。そういうふうに何人もの役者が同じ役を演じてきたという歴史を受け止めながら、自分なりに演じられたら、と思っています」

そんな中、河合さんらしいエミコをどう演じようと思っているのか。

「エミコはストーリーの後半部分に出てくるキャラクターで、以前は『カリフォルニア』にいなかったけど、現在はここで働いているという若い女性。“おじゃまする”という立場は、自分にも重なります。ベテランのみなさんの中で役者を始めて4年目の21歳の自分が、この“悲劇”にもたらせる作用が何かあればなと思っています。」

「多様性とは何か」を考えさせるようなメッセージを、役を通して発信していきたい

『ドライブイン カリフォルニア』の公演チケットには、22歳以下を対象とした「ヤング券」の販売がある。自身と同じ世代に、この舞台のどんなところが響いたら、と思っているのか。

「舞台では、テレビでも映画でも感じられないものを体感できると思っています。私はそれを感じに行くことがすごく好きなんです。松尾スズキさんの『マシーン日記』は映像で観たことはあったんですが、昨年、大根仁さんが演出したものを劇場に観に行って、改めて心を蹴破られたような衝撃を受けたんです。それを松尾さんにお伝えしたら、『若者にまだ届くんだと思って、うれしいよ』とおっしゃっていました。同世代の方にも舞台を体感していただきたいですね。この『ドライブイン カリフォルニア』が“観劇デビュー”作品になったらうれしいです。絶対に心に響くと思います」

これからの時代を担っていく21歳として、多様性社会については興味を持っているという。

「多様性とは何か」を考えさせるようなメッセージを、役を通して発信していきたい

「これからの社会はどうしても多様化していくと思うし、しなくてはいけないと思っています。でも“多様性”という言葉がひとり歩きしてしまっている感じもするし、捉え方や体現のしていき方に疑問も持っています。もちろんその疑問についての答えは出ていないんですが、ずっと考えて行動していきたいですね。この仕事をしていて『今自分に何ができるのか?』といったら、やはり出演する映画や舞台を通してメッセージを発信することだと思っています。それはいわゆる社会派と分類されるような映画に関わっていくということではなくて、どんな作品でもどんな些末なテーマや感覚でも、観る人に対してなんらかの影響力を必ず持っているので。対して、SNSで自分の意見を発信されている方のことも、尊敬していますし、根本的な目的意識は同じだと思います」

最近は家具を見るのにハマっていて、インターネットで探したり古道具店めぐりなども楽しんでいるという河合さん。今は、『ドライブイン カリフォルニア』出演の楽しみでいっぱいだという。

「出演のオファーをいただいたときから、ずっと楽しみにしていたことが始まります。このおもしろいストーリーが、私が出演することで、新しいものになればいいなと思っています。怖がらず、気張らず、のびのびと、精一杯楽しみたいです」

「多様性とは何か」を考えさせるようなメッセージを、役を通して発信していきたい

日本総合悲劇協会 VOL.7『ドライブイン カリフォルニア』

【作・演出】松尾スズキ
【出演】阿部サダヲ、麻生久美子、皆川猿時、猫背椿、小松和重、杉村蝉之介、田村たがめ、川上友里、河合優実、東野良平、谷原章介
【東京公演】2022年5月27日(金)〜6月26日(日) 本多劇場
(問)大人計画 03-3327-4312(平日11:00〜19:00)
【大阪公演】2022年6月29日(水)〜7月10日(日)サンケイホールブリーゼ
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888(11:00〜16:00 ※日祝・休)

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