異色の肩書「鼻血イラストレーター」。
血液研究者の彼女が“美容医療派”である理由

2023.03.08
ときぬか
取材・文:山西裕美(ヒストリアル)
撮影:荒 眞人
ときぬか 経験施術は医療ハイフ、医療脱毛、ピーリング、ボトックス、ピコスポット。
奈良県出身。京都の大学の農学部で生物学を学び、その後大学院へ。卒業後は医療機器メーカーに勤務。学生の頃からスタートさせていたイラストレーター業を本格化すべく、2020年に上京。京都時代とは別の大手医療機器メーカーで血液の研究をしながら、“鼻血イラストレーター”「ときぬか」 として活躍中。趣味は、低温調理器による調理。
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平日は大手医療メーカーで研究員として働き、休日と夜は「鼻血イラストレーター」として活動しているときぬかさん。子どもの頃から“鼻血”に興味を持ち、学生時代は生物学を研究、自然な流れで血液研究者に。「実験、研究が好き」だからこそ行き着いたという美容医療への関心と、拠点を京都から東京へと移し、どんどん広がっていると言うときぬかさんの夢について聞いた。

“鼻血” が研究社への道を開き、
イラストにも息を吹き込んだ。

テーブルに並べられた、ポストカードやステッカー。スタイリッシュで美しい女性が描かれているが、よく見るとその鼻からはひと筋の鼻血が……。イラストレーターとしても活動するときぬかさんの“鼻血”に対するこだわりは、並々ならぬものがある。その始まりは、彼女の小学生時代までさかのぼる。

「隣の席に座っていた男子が鼻血を出したことがあって、それが衝撃的で今でも記憶に残っています。私は生まれてから一度も鼻血が出たことがないので、未だに“憧れ”があるというか(笑)。映画などで鼻血が出るシーンは必ずチェックしています。ブラッド・ピットが出演している『ファイト・クラブ』は何度も観ていますし、『レオン』にもナタリー・ポートマン演じるマチルダが鼻血を出すシーンがあります。最近のものでは、ビリー・アイリッシュの『bad guy』のミュージック・ビデオが鼻血をテーマにしています。自然に“つ〜”と出ている感じの鼻血が好きです(笑)」

ときぬかさんインタビューで笑顔を見せる

アメリカのロックミュージシャン、アンドリューW.K.のアルバムジャケットの写真にも鼻血が出ていますよ、と思わず情報を伝えると、

「他にもあったら教えてください!」

と目を輝かせるときぬかさん。子どもの頃から得意だったというイラストは、いつしか鼻血への興味を表現する場になっていったという。

「子どもの頃から人物の顔を描くのは好きだったんですが、最後に『何か物足りないな』と鼻血をトッピングする手ぐせがあって(笑)。まとまってキレイに収まる予定調和を崩したい、というのがあり、鼻血は“息を吹き込む”感覚で最後に入れます。美しい女性に鼻血という違和感、インパクトは人によっては不快かもしれないんですが、多くの人ではなく、10人中ひとりにでも刺さってくれれば、と思っています。『鼻血がなければいいんだけど』と仰るお客さんもいますし、私の母親も『なんでこんな趣味の悪い絵を描くの?』と嫌がります(笑)。現在はイベントに出品したり雑貨店に委託してグッズを販売したり、実際に絵を描いているところのライブ配信をしたり、依頼を受けてイラスト制作もしています。仕事として、基本は“鼻血込み”でご依頼いただきたいですが、私の絵柄を気に入ってくださっているけど、どうしても鼻血はハマらないというのならば、相談させていただきたいです(笑)」

ときぬかさんのイラスト

小学校の頃から注目していた鼻血は、学業における進路にも影響した。

「大学、大学院では血液中のヘモグロビンを研究していました。私はもともとアトピー性皮膚炎を持っていたのですが、子どもの頃から、病院に行って治してもらうということが好きだったんです。その後『人間も化学物質でできている』と知って、どんどん生物学に興味を持っていきました。現在、本業の所属会社では血液検査装置の開発部に所属して、日々、白衣を着て血液の研究をしています。海外の雑誌に論文を発表したこともあります」

リスクや事例をとことん研究。
治療も予防も、納得してから施行する

元来「実験、研究が好き」だというときぬかさんが、初めて受けた美容医療は大学生のときの「医療脱毛」。学業同様にとことん事例を調べた結果、「エステよりも医療脱毛だ」という考えに行き着いた。

「サプリより医薬品のほうが効果があるのと同様に、医療脱毛のほうが少ない回数で半永久的に生えてはこないですし、そう考えると費用も安い。これをきっかけに、“美容医療派”になったんです」

ときぬかさんインタビューカット

受ける医療については、自身で徹底的に調べるのだそう。

「体のどこに作用して、どんなリスクがあるのかなど徹底的に調べて、ときには英語の論文までたどって読んで、納得したもののみを受けています。あとは歴史の浅いものには手を出さないですね。最近では定期的に、フェイスラインの引き締めリフトアップのために『医療ハイフ』を受けていますが、実はこれは癌治療のために開発されたもので研究の歴史は20年以上と長いんです。もうひとつ定期的に受けているのは、ボトックス。眉間のシワや目元の小ジワは1回できてしまうと消すのがとても大変と言われています。だから定期的にボトックスを弱めに打って、“予防”にしています。あとは状況に応じて、シミ取りレーザーの『ピコスポット』などを受けるときもあります」

ときぬかさんの笑顔

「いくら洋服やコスメにお金をかけても、やっぱり素材自体が良くないと意味がない。年齢が上がるとともに美容医療を受ける機会が増えてくると思っているので、今後もうまく付き合っていきたいですね」

いずれは美容機器の開発も……。
“鼻血”イラストレーターの広がる夢

“美容医療派”の関心は、受ける側だけでなく開発側にまで広がっている。

「東京に引っ越してきて、自費で『美容皮膚科学会』に参加しています。会員には医師や看護師が多いですね。いずれは美容医療の機械の開発にも携わってみたいので、現在研究中のマシンの効果を聞けたり、たくさんの症例を見られたりするのはありがたいですね。あと、化粧品のサンプルなどもいただけたりするので、研究にも役立ちますし、日常生活に使うのにも正直助かっています(笑)」

東京に引っ越した理由は、「イラストの仕事を広げたかった」から。しかし、それだけでなく、夢広がるばかりだと言う。

ときぬかさんイラストを描いている

「『民泊』の運営を考えていて、物件を探しながら勉強中です。レンタルスペースを借りるよりも所有したほうが、自分のギャラリーや個展もできるし、友人の同業者に貸したりもできるなと思っています。今は研究員として働きながら、副業でイラストレーターをやっていますが、将来的には自分の会社起こして活動したいですね。いろんな可能性を探っているところです。結婚や出産もあるかもしれないですし、状況は変わっていくと思いますが、充実した人生を送っていきたいですね」

ときぬかさん椅子に座り、笑顔でこちらを見つめる
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