わざわざ中国や韓国に行かなくてもいい
「二重にしたい」がすぐそばで叶うのだから

2024.03.04
南 梅花
取材・文:平川 恵
撮影:SHOTA SOTODATE
南 梅花 施術経験は、二重埋没法、シミ取り。昼間は不動産会社で事務の仕事に従事し、夕方からは明治大学 グローバル・ビジネス研究科にて MBA取得のための勉強をしている1997年生まれ。国籍は中国。趣味はヴィンテージショップ巡り。
昼は不動産会社の事務員、夜はMBA取得のために経営やビジネスを学ぶ大学院生と、二足の草鞋を履く南 梅花(なん・ばいか)さん。国籍は中国である南さんが日本で美容医療を選択した理由とは?

元カレの無神経な発言に触発されて、即行で二重に

20歳の大学生の頃、埋没法で二重にした南さん。きっかけは当時付き合っていた彼からの心ない一言だった。

「『南ちゃん、性格悪いし、よく見たらほんまにブスだし。俺、よくお前と付き合ったなぁ~』って言われて、すんごくくやしくて。私、顔が大きいんですけど、二重にして目が大きくなったら顔の余白が小さくなって、顔が小さく見えるのかな、と思ったんです」

ONEドキュメンタリー取材南さん

もともと片目はキレイな二重だが、反対側の目は奥二重。小さい頃からバランスはよくないと感じてはいたが、それほど気にしてなかったという。が、元カレの言葉に刺激され、一念発起。すぐさまネット検索でクリニックを調べ、二重の施術に踏み切った。施術にかかったお金は約5万円。当時は大学生だったが、アルバイトで稼いだお金で十分賄えたという。ちなみに日本では、就職で有利に働くよう就活の一環として美容医療に臨む人もいるというが南さんの場合、特に就活は意識していなかったらしい。

「当時の彼氏さんにむかつくこと言われたから、キレイになって、もっといい彼を捕まえようって思って二重にしました。前から気にしていたわけではなかったので大きな変化はないですが、自分の写真をよく撮るようになったかな? その方とは二重にしてからすぐに別れましたね(笑)。今は優しい人を募集中です(笑)」

中国でも二重の施術は人気。美容医療を受ける人は少なくない

南さんの国籍は中国だ。日本、中国、韓国といった北東アジアでは一重まぶたの人口が多く、日本においては約70%の人が一重まぶただといわれている。日本では、一重まぶたを二重にしたいと考える人が多い傾向にあるが、それは中国も同じだという。

ONEドキュメンタリー取材南さん

「中国でも美容医療をしている人は結構多いです。みんな美意識高いんで。中国は貧富の差が激しいのですが、生活に余裕がある人なら結構美容医療を受けていますね。ただ、施術をするのは珍しくなくなったとはいえ、みんながみんなオープンに話すわけではないです。私は人に『あれ?そんな二重だったっけ?』と聞かれたら、『うん、美容医療受けたの』って答えますけど。そこは人それぞれですね」

美容医療を受けることに抵抗感はなかったものの、二重にする前は中国に住む親に相談したという。

「お父さんが『もう成人しているし、自分の選択に責任を持てるなら全然どうぞ』って。お正月、実家に帰ったら、親から『こんなキレイな二重だったっけ?』と聞かれるくらい完璧な施術でした」

ONEドキュメンタリー取材南さん

最近は、シミをレーザーで消した。

「昔はシミがなかったんですけど、日焼けをしすぎたせいか、おでこのあたりに大きなシミができちゃって。隠そうとしても前髪が似合わないし、おでこを出したいから、シミを消すレーザーの施術を受けました。1週間でキレイに消えてよかったです。それからは前髪をつくる必要もなくなりました。価格は中国と変わりませんが、今の私は日本にいるんだし、わざわざ中国や美容大国の韓国で施術を受ける理由はないので、先生のインスタグラムで症例を見て、技術の判断をしてからクリニックを決めました」

ダーツで決めた日本へ留学。卒業後は不動産会社に就職

インタビューにもよどみなく日本語でスラスラと答える南さん。驚くことに日本に住み始めて10年にも満たないという。日本に住もうと考えたのは、ダーツで決まったから。

ONEドキュメンタリー取材南さん

「中国では18歳で成人を迎えるんです。私、これまで海外に行ったこともなかったから、親に中国以外の国を見たいといったら、『いいよ、どこでも行かせてあげるよ』って言われて。で、世界地図にダーツを当てたら、そこが日本の岡山県だったんです」

そして、本当に日本の岡山県の高校に留学生枠で編入。日本語は全くしゃべれなかったが、中国語に訳してある学力テストを受けて合格したという。そこから少しずつ言葉を覚え、大学入学のため東京へ上京。大学では観光経営学科で世界遺産や建築、経営に関することを学んだ。卒業後は観光に関する仕事に従事する予定だったが、コロナ禍に巻き込まれる。

「就職するタイミングに、コロナが大流行してしまって。マスクさえも買えない時期だったんです。実は、ある会社の内定をもらっていたのですが、先方からキャンセルさせてくれと、お願いの連絡が来て……。日本で働きたいと思っていたので、どうしよう……と困っていたら、今働いている不動産会社の社長が私を拾ってくれたんです」

将来の役に立ちそうなことを勉強したかった

不動産会社に勤めて3年目を迎える南さんは、あっという間に一通りの業務を覚えてしまった。仕事の処理も早く、時間を持て余したこともあり、思い立って社会人枠で大学院に入学。今は終業後、MBAの取得のため勉学に励んでいる。

ONEドキュメンタリー取材南さん

「大学も経営を学んでいたので、MBAでも取ろうかなと思って。将来プラスになりそうだし、会社の社長にも相談して、夜間の大学院に行くことにしました」

社会人枠の入学条件のひとつは、「社会人経験2年以上」。現在26歳の南さんはクラスで最年少だ。

「大学院には、大手企業の部長クラスの方も通っていて、平均年齢は42歳。みんなと歳が離れすぎているので、悲しいことに友達はつくれていないんですけど、不動産の授業があるので民法などの勉強が、今の仕事にリアルに役立っています」

結婚後も働いて、社会とつながっていたい

思い立ったら即行動。フットワークのよさで欲しいものを獲得する強さが南さんにはある。

南 梅花

「私は、コレといって決めていることがなくて、やりたいことがあれば今すぐやるみたいな性格なんですよ」

留学先を岡山県に決めたのも、とにかく地図にダーツが刺さったから。大学院に通い始めたのも、偶然手にした社会人の資格の本にMBAが紹介されていたから。二重の施術を受けたのも元カレにからかわれてくやしかったからだ。南さんは「日本語をしゃべれないから」「お金がかかるから」「難しそうだから」など、やらない理由を見つけ、あきらめることはしないのだ。

今は不動産の仕事をしながら、MBAの勉強をこなしている。会社は遅刻をしないし、学校ではレポートを期日内に提出している。そこまで頑張れる理由には、南さんが描く将来のビジョンも関係しているという。

ONEドキュメンタリー取材南さん

「私はこの先、結婚して、子どもを産んで、主婦になる、と思うんです。生活が変わっても私は社会とつながっていたい、という気持ちが強い。大学で学んで、不動産屋で働いて、しっかり勉強をしていれば、将来、結婚して子どもを産んだあとでも、アルバイトでもなんでもどこかで雇ってくれると思うんです」

3人きょうだいの末っ子の南さんは、10歳離れた専業主婦の姉が社会に取り残されている様子を間近で目にしてきた。

「姉は子どもを産んでから家庭に閉じこもって、鬱っぽくなってしまったんです。『昔の友達もみんな家庭に入って忙しそうだから連絡が取りづらいし、ずっと専業主婦だったから社会に戻れない』って言ってて。毎日大人の言葉がわからない子どもと、旦那さんとしか接していない……。そんな毎日に参ってしまったんです」

中国では、安定を求める女性は、妊娠・出産を機に、家庭に入る人が多いようだ。

ONEドキュメンタリー取材南さん

「結婚前までのキャリアを捨ててしまう……それが私は嫌で。私は、結婚して出産をしても、社会に出ていろんな人と出会いたいし、外の空気を吸いたいし。喋るのもめちゃくちゃ好きだし、うん」

これから先も、できれば日本で働いていきたい。それは優しいみんなに出会ってきたから。

「日本の高校に編入したとき、中国人が1人だったから、みんな私に気を遣って声を掛けてくれたんですよ。先生も『1人で中国から来て友達もいないから、みんな仲良くしてあげてくださいって』と言ってくれて。大学でも、私だけ中国人だったから、みんな『これ、一緒にやろうよ』と気を遣ってくれたし。不動産屋の社長も『国も違うし、言葉の壁もあるだろうから、最初はミスしてもいいから1回やってみて。もし、失敗しても勉強すればいから』って。みんな優しいです。本当に恵まれてるんですよ、私」

ONEドキュメンタリー取材南さん
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