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「大学生にはまだ早い」をどう超えられる?
美容医療、親説得大作戦 ~10の極意~

2025.07.07 取材・文:野中真規子 イラスト:えのきのこ
脱毛や肌管理などの美容医療を受ける大学生が増えています。

その理由のひとつは、韓国アイドルなどの影響で美の基準値が上がったこと。自力のスキンケアでは限度がある中で、美容医療による劇的な効果を期待する傾向があるようです。

またインフルエンサーが日常的に施術を受ける様子をSNSで見ることで、美容医療を「自分ごと」としてとらえる人も増えました。

一方で、大学生が美容医療を受けるには資金、ダウンタイム、リスクなどさまざまなハードルがあります。中でも大きなものが「親の反対」。

大学生が美容医療を受けるための最初の壁ともいうべき「親の説得方法」について、東京未来大学副学長で、犯罪心理学の専門家としてテレビ番組のコメンテーターなどでも活躍されている出口保行さんに、心理学の観点から伺いました。

なぜ親は、子どもの美容医療に反対する?

親の足にしがみついて「二重にしたい」と号泣する大学生の娘、断固反対する親

——そもそも、なぜ多くの親は、子どもが美容医療を受けることに反対するのでしょうか。

誰しも自分が理解できないことについてはまず否定から入るものです。
美容医療について知識や理解がない親であれば、まず反対して当然だといえます。

人の価値観は育ってきた時代背景が大きく影響します。親と子どもとの間には世代間ギャップがあり、そのせいで価値観が大きく異なってくる可能性が高いのです。

——たしかに、親の世代は美容医療というと「整形」「芸能人など特別な人が受けるもの」という認識がありそうですね。一方で今の大学生は、中高生時代ににきびができれば皮膚科に行って治療を受けるのが当たり前の世代。その延長として、ほくろ取りやピーリングなどの施術を受けることも自然の流れであり、ネイルやまつ毛パーマなどと並ぶ「美容DAY」のメニューとして美容医療を選ぶことも珍しくありません。

いつの時代も世代間ギャップは存在します。たとえばがんの治療も、一昔前は大きなリスクを伴うものとして躊躇する人は多かったのです。それが今はリスクも減り「できるだけ早期に治療したほうがいい」という意見が大多数です。

——美容医療も今はだいぶリスクが減っています。

ただ、それを説明したところで親は「がん治療は命に関わるけど、美容医療は違う」と否定するはず。「美容医療は単に外見をよくするためのもの」という認識を持っている親が納得できるような説明をしていく必要があります。

心理学者がアドバイス!親を説得するための10の方法

崖の上に立ち、「絶対二重にする!」と決意を固めメラメラする女子大生

出口さんのアドバイスから、親を説得するためのポイントをまとめました。

①価値観の違いや世代間ギャップを理解しよう

まず親子であっても価値観の違いがあることを認識しておきましょう。ましてや親世代は美容医療に対するイメージが違います。自分にとって美容医療がどんなに意味があることであっても、親はそうは思っていないかもしれない、という前提で戦略を立てるのです。

②自分の「心」のために必要だと説明しよう

一番大切なのは、自分の「心」のために美容医療が必要なのだ、と親に伝えること。
美容医療を受けて生きていく活力を得られるなら、受けることに大きな意味があるでしょう。自分の気持ちをきちんと整理し、親にその価値観を共有しましょう。

③親のタイプを知ろう

どんな親にも効く説得方法はありません。場数を踏みながら、自分の親に効果的な話し方を探っていきましょう。ただ、最初は親のタイプを調べてみると、近道になるかもしれません。

以下の図を見てください。心理学の世界で長く使われている「親の養育態度のタイプ分け」を参考に、親を4つのタイプに分けています。支配と服従の縦軸と、保護と拒否の横軸とで整理すると、4つのパートができ、それぞれが親のタイプになります。それぞれ説明していきます。

⚪︎支配×保護=過保護型
子どもを支配し保護する。過剰に積極的な養育態度。世話を焼きすぎて、子ども自身の成長の機会を奪ってしまいます。子どもは依存的で自主性がなく、打たれ弱くなります。

⚪︎支配×拒否=高圧型
子どもを受け入れず、支配的に振る舞う養育態度。命令して親の思い通りに行動させようとします。子どもは自主的に何かを達成しようという意欲に欠け、自己肯定感が低くなります。

⚪︎服従×保護=甘やかし型
子どもの顔色をうかがい、言いなりになる養育態度。必要な指導をせず、子どもに課題解決の機会を与えません。子どもは共感性が乏しく自己中心的になります。

⚪︎服従×拒否=無関心型
子どもに対して拒否的であり、主体的に子どもに関わらない養育態度。親自身の生活が中心であり、子どもへの関心が薄い、子どもは被害感や疎外感が強く、自己肯定感が低くなります。


どのタイプがいい、悪いというのはありません。タイプは2つにまたがることもあり、あなたの親がどれかにぴったりと当てはまるとは限りませんが、日頃のやり取りから親を観察してみると、なんとなく近いものが見つかると思います。

④タイプ別に説得方法を考えよう

支配が強い「高圧型」と「過保護型」タイプは、どちらも敵対関係にならないように気をつける必要があります。またそれぞれの「子どもを支配したい気持ち」が満たされるようにシナリオをつくりましょう。

たとえば高圧型なら「思う通りに子どもを動かしたい」と思っているので、美容医療を受けることで、自分がどう思い通りになるのかを説明します。親が「大企業に入って欲しい」と願っているなら「大企業に入るために二重埋没を受け、面談時の印象をよくしたい」というふうに説明してみるのです。

過保護型なら、「自分の力で子どもを守りたい」という思いが強いので、「学校や将来の職場で不潔な人と思われないように、肌管理系の施術を受けたい」というふうに説明してみてもいいでしょう。

いずれも、最終的に親自身が「じゃあ受けてみたら」と自発的に言うように促すのがポイントです。

「無関心型」は、基本的に子どもが何をしようがかまわないので、反対されることもないかもしれません。

「甘やかし型」の親は、説得するのは簡単かもしれませんが、実はこのタイプは要注意。
親は子どもの言いなりですから、責任はすべてあなた自身にのしかかることになります。美容医療を受ける際は、自分でリスクや将来的にどのような変化があるかなどをしっかりと調べておく必要があるでしょう。

⑤成功事例を知っておこう

実際に親を説得できた大学生の成功事例を知っておくと、ヒントになったり、親への説得材料になるかもしれません。

ここでは、ONEの大学生メンバーやその周囲の人の事例をご紹介します。

⚪︎「受けないデメリット」を長期に渡り説明(18歳で二重整形)
小学校6年生の頃から受けたいと話していましたが、父は絶対反対。中学生の頃から母に値段、術式、メリットデメリットなどを説明していました。長年アイプチで二重をつくっており、それによって肌が荒れていることも説明したところ、高校卒業時に賛成してもらえました。

⚪︎美容医療を母との共通の話題に(22歳で肌管理)
母も美容に関心があり、眉毛アートをしたり、美顔器を購入するたび報告をして共通の話題にしてきました。母の肌の悩みなども聞いて、合うと思う施術を紹介し、一緒に受けに行くようになりました。

⚪︎成人し、自力でお金を貯めて実行(20歳で二重整形)
親を説得できそうになかったので、自分でお金をためて20歳になってから受けました。2週間ほど友達の家に泊まるなどしてバレない工夫をしました。母の理解を得る労力よりも、自分でお金をためたほうが楽だと思いました。



他にも……

⚪︎自分のコンプレックスと向き合っていることを正直に伝える
⚪︎実際の症例写真を見せて受けるメリットを伝える
⚪︎“清潔感”の延長線で語る(就活・面接対策にも)
⚪︎実はコスパがよいことを伝える(化粧品にお金をかけるより安上がり、など)
⚪︎一度カウンセリングに同行してもらう
⚪︎医療機関の発信や医師監修の資料を一緒に読む



などが有効なケースもあるかもしれません。

⑥丁寧に、段階を踏んで説明しよう

親のタイプ別に説得材料を考えたら、あとは丁寧に説明することです。
反対意見を持つ相手には、言葉ひとつ足らないだけでも「意味がわからない」と否定されてしまいます。焦らず段階を踏んで、時間をかけて説得していきましょう。

⑦大きい紙に家族全員の頭の中を書き出してみる

ダイニングテーブルの上に大きな模造紙を広げ、相談事や状況を家族で書き出して整理している

美容医療について、自分の気持ちやメリット、デメリット、親の懸案事項などを書き出して整理すると価値観の共有につながるかもしれません。出口さんも娘さんから相談を受けると、模造紙に本人の気持ちなどを書き込ませて一緒に方向性を探っていたそうです。

⑧感情のコントロールも必要

親は近しい間柄だけに、わかってもらえないと感情が爆発しそうになることもあると思います。感情のコントロールも意識しましょう。爆発しそうになったら場所を変えるか、あらためて仕切り直すことです。

⑨日頃の行いも大切に

親は、子どもが小さな頃からその行いを見てきています。だらしない生き方をしていれば、「この子は信用ならない」「本人には任せられない」「管理しないと」と思われて当然。普段の生活態度、勉強への姿勢、交友関係などを改めて「この子がいうなら大丈夫」「本人に任せてみよう」と思ってもらえるようにしましょう。

⑩親も一人の人間だと認めること

ある程度の年齢になってきたら、親に「わかって欲しい」と思うだけでなく、大人同士として親という人間をどう巻き込むのか戦略を立てられるようになりたいものです。美容医療を起点として、親がどんなタイプで、何を考え、何に迷っているのかを整理してあげられるようになると、その先のコミュニケーションもしやすくなります。

親の攻略法は、「就活」や「恋愛」にも使える!

企業の採用担当(メガネのおじさん)に「採用!」と言われ、イケメン男子に「好きです!」と言われている無敵っぽい女子大生

——美容医療を受けるための、親の説得方法について伺いましたが、今後いろんな場面で応用できるのでは?

自分の希望をかなえるために、情報を集め、自分の気持ちを整理し、相手と価値観をすり合わせていく。こうした行いを繰り返すことで、この先の社会生活や家庭生活においても役立つスキルを磨くことができます。

たとえば仕事で営業をするのでも、相手と価値観を共有できる部分を探っていくことは基本中の基本。何かを「売りたい」なら、お客様が「それを欲しい」という価値観の共有があってこそ買ってもらえるわけです。

言葉尻をとらえるだけではなく、会話の中で、相手の表情やしぐさも観察しながら交渉できるようになれば、就活の面接や仕事、人間関係、恋愛、家庭生活にも生きるコミュニケーション力になると思います。

失敗もあるかもしれませんが、いろいろなアプローチを根気よく試すうちに、相手がどうしたら納得するかがわかるようになってくると思います。

取材協力

出口保行
出口保行
犯罪心理学者。東京未来大学こども心理学部教授・学部長兼副学長。1985年東京学芸大学大学院終了後に、法務省に心理職として入省。全国の少年鑑別所・刑務所等で犯罪者を心理分析するほか、法務省矯正局、法務大臣官房秘書課勤務等を経て、法務総合研究所室長研究官を最後に退官し、同時に東京未来大学教授に。警視庁有識者委員、足立区防犯アドバイザーも務め、在京キー局の多くのニュース番組で非行や犯罪の解説を行うほか、情報バラエティ番組へのレギュラー出演も多数。著書に『犯罪心理学者は見た 危ない子育て』(SB新書)ほか。
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