「今日言ったことが、明日全部覆ってもそれでいい」
俳優・佐藤流司が目指す“ニュートラル”
撮影:屋山和樹(BIEI)
スタイリスト:小田優士
ヘア&メイク:稲越夕貴
自分のまわりにいる人を、もう一度好きになれる青春映画
ふたりのアウトローの生き様を描く映画『アウトロダブル』に、俳優の藤田玲さんとともにW主演を務める佐藤流司さん。この映画は 、2017年の『ボーダーライン』、2018年の『ダブルドライブ-狼の掟-』、『ダブルドライブ-龍の絆-』に続く最新作。舞台『呪術廻戦』や『刀剣乱舞』など、この映画シリーズ以外でも共演が多い藤田さんと今回もまた、“バディ”を組む。
「自分が俳優になる前から玲くんには注目していたし、共演するようになってからも性格とか本人の持っているスペックとか人としてすごく好きなので、自分にとっては玲くんと共演できるだけで値千金です。『この作品はどんな作品か?』といったら、ひと言で言うと“青春映画“で、友情や家族愛と言った側面が強いと思う。横に誰かがいてくれることで強くなれたり、人として成長することができる、ということを感じていただけると思います。家族や友人との関係がうまくいっていない人にも、ぜひ観て欲しいですね。もう一度自分のまわりにいる人を好きになれる作品だと思っています」
気心の知れた藤田さんとの共演で、リラックスして挑めたという撮影。佐藤さんが演じる五十嵐純也と、純也とは腐れ縁で行動を共にする藤田さん演じるアベル。彼らが出入りするライブハウスを経営するロックな男・久保寺を演じる、なだぎ武さんの演技に、現場は笑いが絶えなかったのだとか。
「もう、なだぎさんの演技がヤバすぎて。セリフは台本どおりなんだけど、動きの大半はアドリブだったと思います。そのコミカルな動きに本番中に笑って、出来あがったものを観て本番に気づかなかった部分を見つけてまた笑って」
夢を持たず日々くすぶりながら、行きあたりばったりで生きている五十嵐純也。佐藤さん自身も純也を演じるにあたり、動きのアドリブは入れたのだそう。
「アベルが明るいキャラクターではないので、純也にコミカルさを出して場を回していかないとバディ感は出ないと思っていて。純也の未来はどう考えても前途多難で、一見どうしようもない青年に見えるけど、本人なりに悩んではいるんです。ダメなやつだけどまわりには愛されている。『身近にこういうやついるよね?』と思わせるようにしたかったんです」
このシリーズは『アウトロダブル』で最終章。思い入れのある役柄が今回で最後ということに、淋しい思いはあるのか?
「最終章と聞いたのは、撮影後半だったんです。でも最終章だからって気合いを入れすぎると空回りしそうなんで、普通にひとつの作品に向かうというスタンスでできたし、それでよかったかもしれないですね。『アウトロダブル』のラストは、このまま終わっても純也とアベルっぽいし、違う作品でもう一度再会しても彼ららしい。どう転がってもいいラストになっていると思います」
また、この映画の主題歌となる『BOND』は、藤田さんとのツインボーカルで、作詞も共作によるもの。それぞれの役柄の生き様を叩きつけるような歌詞で、パワフルなナンバーに仕上がっている。2018年から活動するロックバンドThe Blow Beatでは、PENICILLINのボーカリストHAKUEIさんとツインボーカルを取り、作詞・作曲も担当。ここにはその経験が生かされているようだ。
「歌詞やメロディ部分は玲くんが、ラップの部分は俺が担当しました。作詞は何年もやらせていただいたので、自分でもその経験は生かせたように思います。主演映画に自分の歌が使われるのは、今まで経験がなかったことだし、うれしいですね」
人と接するときは、礼儀だけは忘れないようにしている
放映中のバラエティ番組『ろくにんよれば町内会』では、共演する同世代の俳優のなかでも独自の存在感を放ち、音楽活動の相棒となるHAKUEIさんとは、20歳以上の年齢差があるにも関わらずお互いの信頼は厚い。尖っているようで、まわりに愛される感じは、演じる純也と同様だ。
「以前は“若手俳優らしからぬ” とか言われて反感を買うこともあったんですが、徐々にこのスタンスが認められてきたような気もしています。まだ批判的な意見も聞きますが、気にしていても仕方ない。正直、気にならないと言ったら嘘になるけど、争いは同じ次元でしか起こらないので、そこには乗らないという感じです」
ハッキリと自分の意見を言いながらも、言葉遣いは丁寧で落ち着きを感じる。そんな佐藤さんは、誰かと接する際に気をつけていることがあると言う。
「礼儀だけは忘れないようにしています。あとはアウトな発言、特定の人が傷つくような発言はしないこと。これでも人は立てるようにしているし、イジるときも言葉には気をつけているんです。もともと、どんな人に対しても差別なんてしたことはないし、誰に対しても偏見も持っていないですね。多様性はあるべきだと思うけど、マイノリティが優遇されすぎる必要もないとも思うし、当然冷遇されるべきでもない。ニュートラルに接するだけです」
そんなイメージを崩さない佐藤さんだが、実は隠された一面があるのでは? 質問するとニヤリと笑って答えてくれた。
「人に見せないということは、見せたくないことなので、言えないですね」
2011年に俳優としてスタートし、キャリアはすでに10年以上。順調にキャリアを重ねてきたが、これから迎える30代にはどんな展望があるのか?
「“現状維持”で。自分の中ではざっくり“何歳までに何がしたい”というのがあるんですけど、それを人に言って実現しないのではダサいし。『今日言ったことが明日全部覆っていても、それでいい』みたいな意味の誰かの言葉を聞いたことがあるんですけど、まさにその心境です。今日ダメだと思ったことが明日いいと思えるなら、それはそれで自分の意見だし、それでいい。今“こうしたい”と思っていても、多分また変わるし。最近、自分の意見にも柔軟性が持てるようになってきましたね」
そんな中で、“実現可能”な展望を、あえてひとつ挙げてもらうと……。
「これまで舞台に関わってきて、最近は脚本や演出もやらせていただいていますが、ここはずっと続けていきたいですね。それと、役者人生10年を超えて、アクションや踊り、歌など、体を使う仕事が多かったので、次は頭を使う仕事も並行してやっていきたいです。健康にも気を使わなければいけないとは思いますが、“Too Young To Die”の精神でやっていきたいです(笑)」
【監督】西海謙一郎
【出演】藤田玲、佐藤流司、牧島 輝、中村太郎、高橋怜也、内浦純一、星ようこ、なたぎ武、千原せいじ
9/2より、全国にて公開
©2022AMGエンタテインメント
腐れ縁となって行動を共にしている、アベル(藤田玲)と純也(佐藤流司)。たどり着いた街で、手書きの名言を売って小銭を集めていたふたりの前に通りかかった、ライブハウスを経営するロックな男・久保寺(なだぎ武)。ふたりは久保寺とその息子・則夫(高橋怜也)も巻き込んだ、危険なミッションに巻き込まれる。危険でコミカルなアウトロー・バディ・ムービー
『BOND』
1200円 9月2日発売 DOLCESTAR RECORDS
ドルチェスターストア、amazonにて販売