美容にハマったアルツハイマー治療薬の研究者
「肌がきれいだと、毎日24時間楽しい」
撮影:荒 眞人
26歳、東京都在住。大学院博士後期課程1年で、アルツハイマー病治療薬の研究開発中。趣味はスキンケアと音楽鑑賞。V系のライブによく行き、コンセプトカフェで推し活もしている。
興味を持ったものは、自分でやりたくなってしまう。
スポーツや音楽、そしてスキンケアも
渡邉さんが携わっているのは「環境応用化学」という、工学としての化学に軸足を置く応用化学分野。一般的なバイオ系とは違うアプローチでアルツハイマー治療薬を研究しているという。
「もともとは工学部だったのですが、祖父がアルツハイマー症を患っていることから、遺伝の可能性を含めて治療方法に興味を抱くようになりました。世界中で誰もやったことないことにチャレンジしているので、研究の成果を最初に自分が目にするということがすごく大きな喜びです。教科書を見てもわからなかったことを、実際に手を動かしてやってみて確かめることができるのが、たまらなく楽しいですね」
現在は研究者として充実した生活を送っている渡邉さんだが、博士課程に進む前に就活を視野に入れていた時期があり、研究分野と親和性の高い化粧品会社の資料を取り寄せて見比べていた。その時にスキンケアの最先端技術に興味を持つようになり、「自分の肌で試してみたい!」と思ったという。
「元々、自分が好きになったものとか興味を持ったものって、自分でやりたくなっちゃう性格なんですよ。スポーツでも音楽でも」
そこから、興味を持った化粧品やサプリメントなどを生活に取り入れるようになった。専門分野の知識に照らし合わせて調べるのも楽しいし、使ってみて自分の肌でその効果を検証するのはそれ以上に楽しかった。
自分の肌の見える解像度が変わったような感じ
美容に対する興味は、それまで皆無だった。中学の頃にニキビが悪化し、親に皮膚科に連れてかれたが、当時は「別にどうでもいい」という気持ちだった。それほど無関心だったのに、スキンケアにハマりこんだ結果、今まで気にならなかったことも気になるようになった。
「自分の肌の見える“解像度”が変わったような感じ。中学・高校と運動部で外を走り回っていて、日焼けし放題だったので、頬のシミもすごかったんですが、スキンケアを始めて肌の質感が良くなったら相対的にそれが目立って、なんとかしたいと思うようになりました。肌の質感って、すごく印象を左右する。よく美容医療のビフォア・アフターの写真を見るんですが、目や鼻をいじる以前に、肌の手入れをすればいいのにと思うことがよくあります」
美容医療は、調べた通りの変化が起こるのが楽しい
美容医療に最初にチャレンジしたのは、ヒゲ脱毛。スキンケアの延長で、グルーミング感覚だった。
「『ヒゲをそるのって面倒くさい』という単純な動機で、美容医療としてはハードルが低かったんです。狙いどおり、自己処理が2週に1回くらいになり、夕方になると気になっていたヒゲを気にせずに済むようになったし、毎日気にしなければいけないことが軽減されて、心理的負担がかなり軽くなりましたね」
そこから、ハイフ、エラボトックス、フォトフェイシャル、エレクトロポレーション、脂肪吸引、プラセンタビタミン注射、ダーマペン、ハイドラフェイシャルといった美容医療の施術へと進むのに時間はかからなかった。
「調べた通りの変化が自分の体に目に見えて起こるのが、楽しくてたまらなくて……。ヒゲ脱毛をしていなかったら、他の施術も受けていなかったと思います」
結婚したいほど好きな“推し”のために、“ファンの質を上げる”人間でありたいと思っている
美容以外にも多趣味。音楽が好きでV系のライブによく行くし、コンセプトカフェにいわゆる”推し”がいて、「バイトで稼いだお金をたくさん使っています」とあっけらかんと語る。
「元々は、その推しとは別のキャストさんが、好きなバンドのMVに出ていると聞いて、その人が働いているっていうコンセプトカフェに好奇心で行ってみたんです。そしたら別の方を好きになってしまったんです」
できれば仕事抜きでつきあって欲しい?と聞くと「というより、普通に結婚したいです。無理だよ、って本人からは言われているんですが」と、さらりと答えた。
「素敵だなって思うのは、やっぱり笑顔。夜の世界に身を置いている人なわけですが、笑ったときがすごく無邪気な感じで、そのギャップですかね。そして、なんかすごく好きにさせてくれるんです。僕が欲しい言葉を全部くれるというか……」
美容にハマっている理由のひとつに、推しの存在もあるという。
「せっかく推しに会えるのに、汚い状態で会いたくないじゃないですか。大事な時間だから、少しでもきれいな状態で行きたいし、できれば推しのファンの質を高めるような存在、人間でありたい」
自分の肌がきれいだと24時間楽しい。残念なことに、多くの男性は知らないけれど。
客観的にはもう、これ以上あれこれやる必要がないように見えるが、本人的には山でいうと六合目から七合目くらい。やっと頂上が見え始めた段階だという。
「今後の課題としては、日本では非認可の、一定期間服用すれば一生ニキビが出ないと言われる薬を服用しているのですが、それが今年くらいに終わります(テカリが改善されたのはこの薬)。副作用で肌が乾燥するので、保湿ケアが欠かせないのですが、一段落する感じですね」
それが終わったら、やってみたいと思っているのがニードルRF。針を刺すと同時に針からラジオ波が出て熱を放出する施術だ。完全脱毛ももう少しで達成できそうだし、あとはシミを少し直したらゴールだという。聞いていると大変な道のりに思えるが、本人は楽しそうに眼を輝かせて語る。
「美容は、僕にとって毎日が楽しくなる趣味のような感じですね。やっぱり自分の肌って、自分の一番近くに、毎日24時間いるものなので、それが日々、自分の望む最高にいい状態にどんどん近づいてくるんですから、毎日24時間楽しいんです。それだけ、きれいな肌というのは自分をいい気持ちにさせてくれるものなんですよね。『自分はこれでいいんだ』っていう揺るぎない自信を与えてくれるもの。そういう楽しさって、女性は知っていると思うんですが、多くの男性は知らない。もったいないですよね」