「ブルべ」「イエベ」って絶対ですか? ~診断結果に囚われず、自分らしく垢抜けられるメイクが知りたい!~

と、グローバルに活躍するメイクアップアーティストのRyujiさんは言います。「個性を演出する」欧米のメイクに比べて、「欠点を隠す」のが主流で、画一的な顔になりがちな日本のメイク。最近流行の「パーソナルカラー診断」に囚われすぎることも、「個性」が失われる要因になりうるのだとか。
そしてじつは、「診断とは違う色を使ったメイクがしたい」と思う大学生も少なくないよう。「イエベ」「ブルベ」などの結果に囚われず、「いつもと違った自分の魅力」を引き出すメイクのコツや考え方をRyujiさんに伺いながら、本当に「自分らしいメイクとは?」について考えてみたいと思います。
パーソナルカラーを意識しすぎると
「当たり障りのない顔」になる

——パーソナルカラーの診断結果に合うメイクをする大学生が増えています。
人の肌色はきっぱりとは分類できないものですし、体調などでも変わりますから、僕は普段「イエベ」や「ブルベ」などと意識することはしません。
たしかにいわゆるイエベ系の黄みをふくんだ肌には黄みを含んだ色みのコスメを、ブルベ系の青みを含んだ肌には青みを含んだ色みのコスメを使うと、肌の色がくすまず美しく見せることができます。
ただし、そこにとらわれてなじみのいい色ばかり使っていると、よくも悪くも「あたりさわりのないメイク」になることもあります。
――診断結果に合わないとされる色、たとえばイエベの人が青みのある色を使ってみたい、という意見もあります。
以前ある広告の撮影で、イエベ系の肌のモデルに真紅のリップを塗る予定だったのですが、肌色になじみすぎて印象が残らないと思い、適度に青みを含んだ赤のリップに変えてみたのです。すると強烈なインパクトが出て、その広告はとても注目されることになりました。
いつもと違う「冒険メイク」は
「補色」を取り入れてこそ引き立つ

——モデルではない一般の大学生は、補色をどう取り入れるのがおすすめですか?
僕は、メイクは大きく分けて2通りあると思っています。
ひとつは、「自分のスタイルを表現するメイク」。たとえばいつも決まった赤のリップを使う、同じアイラインの引き方をする、などの行為を経て自分のスタイルを完成させることで、自分自身が安心感を持てたり、自分らしさをサインのように見せる意味があります。
もうひとつは、「いつもと違う自分になれる冒険メイク」です。ライブに行くときにかっこよく見せたいとか、デートでセクシーに見せたいときなどに、ファッションにも合わせながら、メイクの色使いやラインの引き方などを変えることで、日常と離れた自分を演出するのです。
この冒険メイクで補色を使ってみると、新しい自分を発見できて面白いと思います。
「シアーな発色」のコスメを使うのが
冒険メイクを成功させるコツ

——補色をうまく取り入れるコツはありますか?
たとえばイエベ系の肌の人が、ストレートに強い青みのマットなリップを使うととたんに古臭い印象になってしまいます。
補色を取り入れるコツは、「シアーな(淡い)発色のコスメを使うこと」です。こうした補色メイクは30代以降になると肌がくすんで見えがちですが、肌が内側から明るく輝いている20代のうちはポップに見えてかわいいと思います。
イエベ系&ブルべ系大学生が体験!
Ryujiさんに教わる補色使いの「冒険メイク」
普段はイエベ系のメイクをしているという大学生・田村さやかさんにブルべ系のメイクを、普段はブルべ系のメイクをしているという大学生・村吉姫さんにイエベ系のメイクを実演しながら、補色使いのポイントを教えてもらいました。
【ブルベ系さん→イエベメイク】
彩度高めなポップカラーでみんなと差をつけたい! 幸せ女子オーラを演出できる「多幸感メイク」

<ブルべさん向けイエベメイクのポイント>

➀オレンジブラウンのアイシャドウをアイホール全体にふわっと広げ、目のキワは強めに入れることで目力を出す
②オレンジのカラーマスカラを塗り、ピンセットで毛束感を演出。マスカラは歯間ブラシを使うことでまつ毛の根本からしっかりとつけられる

③目頭は赤のラインで引き締める。赤のラインはリップライナーなどで代用してもオッケー
④目尻にブラウンのアイライナーを少し入れる
<完成✨>



【イエベ系さん→ブルベメイク】
ペールカラーの多色使いでミステリアスな印象に!モテすぎて困る「フェロモンメイク」

<イエベさん向けブルべメイクのポイント>
➀モーヴ系のアイシャドウを涙袋の目尻側にしっかりと入れ色っぽさを醸し出す。アイシャドーは目の際に暗い色を塗ってから、順番に明るい色をまぶたに重ねていくと、自然なグラデーションに
②眉毛ぎりぎりの位置にライトグレーのシャドウを入れると、肌に青みがすっとなじみクールな印象に

③ベージュ系のチークを広い範囲に入れてから、中心にやや青みのあるチークをのせることで、青みが自然になじむ
④リップはシアーな青みピンク。輪郭を綿棒で軽くぼかすことでジューシーな印象を残しつつ、主張しすぎないので目元を引き立たせられる

<完成✨>



メイクだけでは実現できない、健康的でみずみずしい素肌のつくり方
——今回Ryujiさんのメイクを拝見していて、ベースメイクが控えめなのが印象的でした。
肌が美しいならファンデーションに乳液を混ぜて塗る程度で十分です。若い人は白くマットな肌を求めがちですが、僕はなるべく素材を活かすメイクをするべきだと思っています。逆に言えば、肌の美しさはメイクだけではクリアできないものです。
——美しい肌をつくるにはどうしたらいいでしょうか。
24時間スキンケアをしている意識を持って、十分に睡眠をとり、ストレスの少ない健康的な生活をし、バランスのとれた食事を心がけてください。日中にたくさんお水を飲むのも大切なお肌の保水方法です。
長年、肌の美しさを追求する中で、新しいスキンケアシリーズを開発しました。女性はホルモンバランスの影響によって肌の状態が大きくゆらぎます。シリーズ「4weeksfemme」では1種類の化粧水と、肌のリズムに合わせて2週間ごとに使い分ける2種類の美容液があります。産地にまでこだわったオーガニック精油の香りで、フィトテラピー(植物療法)気分でお手入れしながら、調子のいいときの肌をさらに引き上げ、そうでないときの肌をいたわることができます。
——美容医療で肌管理をする大学生も増えています。
自分が持って生まれたせっかくの素材をデフォルメしすぎて自分がなくなってしまうのはもったいないと思いますが、素材をよりきれいに見せたり、自信を持つための美容医療なら賛成です。
自分の個性に合わせたメイクに挑戦するほどに、魅力的になれる
——大学生のメイクについて、アドバイスはありますか。
欧米の人は個性を主張するメイクをするのに対して、日本人は欠点を隠すメイクが主流です。その方法を教える情報もあふれていて、真面目で勤勉、手先が器用な日本人は上手に再現できるのですが、その結果、みんなが画一的な顔になってしまっている印象があります。
自分が欠点と思っていることも、人から見たらうらやましい個性かもしれません。3つのうち1つでもいいので、その個性を引き立たせることができるメイクを考えながら、いろいろな色や描き方を試してみると、自分の本当の魅力を発見でき、メイクも上手になっていきます。僕はそれこそがメイクの醍醐味であり、楽しいところだと思っています。
そうして心からいいと思ったメイクをしている人は、自信を持って輝けるようにもなります。メイクは失敗したら消せばいいので気軽にチャレンジしてほしいですね。
あとメイクを素敵に見せるには、気持ちを上げることも大切です。メイクをしながら「今日は元気な自分になる」「デキる人に見られたい」などイメージして、気分を上げる習慣をつけるといいですよ。
センスを磨くには、マニュアルや好きなもの以外の美に触れること

——メイクのセンスを磨くにはどうしたらいいでしょう。
さまざまな美に触れてみてください。僕はニューヨークにいた頃、最初は本屋でメイクの本を読んで勉強していましたが、それでは結局誰かの真似になってしまうと思いました。それで美術館に通って、「メイクとは離れたところ」から美をインプットし、メイクに活かせるようになりました。
「自分が好きではないもの」に触れるのもいい刺激になります。知人のフォトグラファーは、あえて嫌いなものや美しくないと思うものを集めて撮影していました。好きなものばかりを撮影していると、その良さが見えなくなってしまうからだと言っていました。
好きなものをもっと好きになるために、嫌いなもの、似合わないと思うものをあえて取り入れることも、自分の感性を磨き、魅力を増すのに役立つかもしれません。
――今回のように「似合わないかも」と思っていた補色を取り入れたメイクをしてみるのも、センスを磨くきっかけになりそうですね。
取材協力
