Documentary

「日本のサービス業は、見た目も知識もお客さんに負けている」ディティールにこだわる、フリースタイルなバーテンダー

2022.11.28
野邑 翔
取材・文:平川 恵
撮影:鈴木真弓
撮影協力:THE UPPER /Instagram
野邑 翔 経験施術は全身脱毛。1987年生まれ、福岡県出身。誕生日は、ブルース・リーとジミ・ヘンドリックス、松下幸之助と同じ。東京丸の内にあるフラッグシップ店「THE UPPER」のドリンク監修、ヘッドバーテンダーを務める。趣味は、アクセサリーづくり、ハーレーでのツーリングなど多彩。
東京・丸の内にそびえる「丸の内テラス」。9~10Fにあるトランジットジェネラルオフィスのフラグシップレストランが、ここ「THE UPPER」だ。9Fは大阪で2つ星を獲得した「La Cime」の高田シェフ監修のフレンチが楽しめる「NINE by La Cime」、10Fはカジュアルに楽しめるブラッスリーメニューを提供している。そして、その2つのレストランの味に合うドリンクを提供・監修しているのが、今回取材に応じてくれた野邑 翔さん。肩ひじを張らないカジュアルさがありながらも、この店が持つ都会的でアッパーな雰囲気を支える野邑さんに、バーテンダー、サービスマンとしての矜持をうかがった。

キャップにTシャツ、ジーンズが似合う、ヘッドバーテンダー

バーテンダーのイメージを覆すようなラフな服装で、軽やかに現れた野邑さん

野邑さん笑顔

「バーテンダーというと、シャツを着て、蝶ネクタイを締めて……でしょ? 今日は僕の取材だから、そういうの、やめようと思って」と笑う。

Tシャツにジーンズのアメリカンカジュアルのスタイルに、自分でつくったシルバーのピアスが似合っている。おしゃれが好きな野邑さんは、20歳のとき語学とダンス留学を兼ねてN.Yに渡っている。

「N.Yを選んだ理由は高校卒業後、自営業だった親のすすめもあってピースボートで世界一周をしたときに訪れたN.Yが一番刺激的だったからです。小さいころから人と違ったファッションをするのが好きだった自分にとって、日本の学校を卒業して日本の会社に就職をする、そんな既定路線の生き方は考えられなかった。それに今の世の中、ちゃんとした大学を出て、仕事を見つけたとしても、将来、絶対安全・安心の保証はない。だったら自分は好きなことをして生きていく。そのためのスキルを身に着けたい。ダンスはあくまでもN.Yに行くきっかけであって、留学中は自分がこれからどうしたいかを模索する期間でもありました」

野邑さんインタビュー

N.Y で最も手が届きやすい外食が、ドリンク。10ドルで食事がとれるのは屋台かデリくらいで、日常的に通うカフェで好きなドリンクを頼むのが、贅沢なひとときだった。

やがて、先輩から教えてもらった飲み方でコーヒーが好きになり、バイト先のデリやクラブでクラフトビールやワイン、ウイスキーの味を覚える。野邑さんは、自らの経験に興味をつなげていった。やがて25歳のとき、ビザの関係で帰国。アパレルの職を経たのち、渋谷にあったアメリカンダイナーでマネージャーに就任する。ほどなくしてメニュー開発担当者になるなか、あるバリスタの姿に感銘を受けた。

「自分でつくったドリンクを、自分の手で自信をもって提供する。そんなバリスタの姿を見て、かっこいいなと思いました」

野邑さん横顔

それからは意識が変わり、ドリンクと共にいかにハイクオリティなサービスを提供するか、を考えるようになった。昼はバリスタ、夜はバーテンダーの経験を積み、興味が赴くままにサービス力や知識、技術を磨いていく。ここ「THE UPPER」においても野邑さんのサービス力は発揮されており、野邑さんが考案したカクテルは“香り”が評判だという。

野邑さんドリンク作成
ドリンクを注ぐ野邑さん

「通常のビストロやフレンチレストランでは、においはご法度ですが、逆にうちは食感や味と同じくらいにフレーバーを大事にしている店。そんな料理に合うドリンクを提供したいと思っています」

見えない情報に左右される時代。今後は、自分を磨く経験が強みになる

興味のままに動き、その経験を強みにするのが、野邑さんのポリシー。

「今の時代、情報を手に入れることは簡単です。昔だったら入手が不可能だった情報まで、いとも簡単にリーチできる。だから今後は自分で得た情報に対して、リアルに見た、聞いた、触れたなどの経験が付加価値として必要になってくると思うんです」

ドリンクとカウンター

今は、SNSでお店が叩かれれば、いとも簡単につぶされてしまう時代。サービスを提供する側が情報に左右される状態を、野邑さんは「負けている」と思う。

「日本のサービス業は低く見られがちです。日本のメディアでは、飲食業は職業ヒエラルキーの最下級と報道されていますが、僕は汚くてかっこ悪いと言われている印象を変えたい。N.Yのサービスマンって本当にかっこいいんです。刺青はバンバン入ってたり、ピアスをたくさん開けてたりするけど、その人のプライド、趣味や主張、嗜好までが仕事をする姿勢から透けて見えてきて、それが本当に自由でかっこいいんです。今の日本のサービス業って、お客さんに負けているじゃないですか。見た目も知識も。サービス業はプロフェッショナルな職業で、本来はお客さんを導く立場にあるもの。自分はいちサービスマンとして、そういう風潮と戦っていきたい」

たとえ見えなくても「ボロボロの下着を着けて仕事をしたくない」

飲食業は、店のランクで提供する料理もサービスも異なる。もちろん来るお客も、お客をもてなすスタッフもだ。「THE UPPER」にふさわしいバーテンダーでありたいからこそ、野邑さんは見た目にもこだわるという。全身脱毛をしたのも、サービスマンとして負けたくないと思う、野邑さんのセルフプロデュースのひとつ。

野邑さんカウンターに座る

「人は見た目で判断します。自分はファッションのこだわりがあるから、その気持ちは理解できます。ファッションは、自分の好みを伝える簡単な名刺代わりみたいなものですから。だからこそ、自分はディティールを詰めたい。見えないところであってもボロボロの下着を着けて仕事をしたくないし、適当に済ましたくない。脱毛もそうです。これまで自分で体毛を処理しましたが、マナーやエチケット的な意味もあって、ひげ以外はすべて医療脱毛で処理しました」

男性の美容医療は進んできた。コンプレックスを払しょくする美容医療については、前向きに考えてもいいのでは、と野邑さんは理解を示す。

「具体的にはまだ考えていませんが、審美歯科には興味があります。コーヒーも飲むし。接客する立場からしたら、見た目の清潔感にこだわっていきたいですから」

野邑さんと高層ビル
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