50代で俳優に挑戦
踏み出した一歩が“自信”を与えてくれる
撮影:森 カズシゲ
未知の世界に飛び込んで見つけた「俳優」という夢
盛さんが総合芸能学院・テアトルアカデミーに入ったのは、2022年1月のこと。もともとは俳優を目指していたわけではなかった。
「以前から在宅の仕事をしているんですが、コロナ禍になってからオンライン講師を務める場面が出てきて、人前に出る際の振る舞いや話し方を勉強したいという気持ちが湧いたんです。勉強して上達したら、ナレーターみたいな声を使う仕事も面白そうだなって。でも、若い頃から外見に自信がなかったので、俳優になろうとは考えていませんでした」
しかし、いざレッスンに通い始め、本格的な演技を経験し、その面白さや奥深さ、難しさを体感すると、俳優の仕事に取り組みたいと思うようになっていく。
「幼い頃、ミュージカル『ピーター・パン』を見たときに、役を演じることや俳優さんの熱量に感動して、小・中学生時代は演劇部に入ったんです。当時は、俳優になりたいと思うこともありましたが、現実的なことを考えて諦めました。その頃の夢が、今になって再燃したところもあるのかなと」
現在はアカデミー生として、さまざまなレッスンに通う日々を送っている。その中で、自分でも意外だと思うものにハマった。
「アクションの稽古が楽しいんです。これまでスポーツをほとんどしてこなかったので、この年齢になって初めて、身体を動かして汗をかくことの楽しさを実感しています。稽古の後は全身筋肉痛でつらいけど、身体も締まってきたし、毎日が楽しいです」
一緒にレッスンを受ける仲間は、同世代の人もいれば小学生の子もいる。その存在が刺激になっている。
「子どもって新しいことを習得するスピードが速いので、『さっき教えてもらったことってどんなだったっけ?』と、子どもたちに聞くこともあります。普段の生活では、小学生から教わる経験ってなかなかないので、すごく新鮮で刺激になっています。もともと私は人見知りするタイプなんですけど、新しい挑戦をダメにしたくないので、内心ドキドキしながら周りの人に声をかけてます」
仕事にも夢にもまい進できるのは子どもたちのおかげ
テアトルアカデミーに通いながら、仕事も継続している。以前から続けていた在宅の仕事に加え、飲食店2店舗と警備員のアルバイト。
「前は在宅の仕事だけで、1日15時間くらい働いていたんです。でも、レッスンに通うとなるとそこまで働けないので、在宅の仕事を減らして、すき間時間でアルバイトに入るようになりました。貧乏性なので、間が空くと『仕事入れられるな』って思っちゃうんですよね(笑)」
仕事を頑張れるのは、4人の子どもたちがいるから。夫と離婚してからたった1人で育ててきた。
「離婚したときに、何かして生きていかなきゃと思って、専門学校に通って保育士の資格を取り、保育園で働いたんです。ただ、私が朝から晩まで働くから、当時2歳くらいだった末っ子が情緒不安定になってしまって。上の子たちにも家事や末っ子の面倒をお願いして、負担をかけていたので、これじゃいけないと思って在宅の仕事に切り替えました」
子どもたちには、それぞれの人生を歩んでほしいと思っている。だから、最低限のこと以外は口出ししない。
「子どもたちには、自分で考えて行動できる人になってほしいと思っているので、彼らの選択に任せています。『やりたいことはいくつになってもできるし、大学だって2回も3回も行っていいんだよ』って、話してるんです。私自身、40代で専門学校に行ったり、今もレッスンに通ったりしているので、同じように自由に生きてほしいなって」
「宣材写真」が教えてくれた今の自分と理想の自分
俳優を志してから、演技のレッスンとは別に、もうひとつチャレンジしたものがある。美容医療だ。
「初めて宣材写真を撮ったときに、衝撃を受けたんです。体重は増えていなくても、年齢を重ねると体型が崩れたり顔がたるんだりするんだと、自分の写真を見て実感してしまって(苦笑)。これはなんとかしないとって思って、最初は美容鍼や小顔矯正に通いました」
鍼や矯正の効果か、顔が引き締まった感覚があった。美容ケアの成果が出てくると、次は肌の調子も整えたいという気持ちが湧いてくる。
「たまたま引っ越した家の近くに美容医療のクリニックがあったので、カウンセリングへ行ってみたんです。受付の方も看護師さんも丁寧に対応してくれて、ここなら安心してお願いできそうって思いましたね。もともと美容医療に興味はあったので、ここで一歩踏み出す勇気が湧いた感覚でした」
若い頃から目立っていたおでこや首のしわ、鏡を見るたびに気になった顔のたるみなどの解消を目指し、ボトックス注射やハイフの施術を受けた。
「ボトックス注射でおでこのしわ、ハイフで首のしわが薄くなりました。パッと見ただけで効果がわかったので、うれしかったです。定期的な施術が必要になりますが、私は毎日の化粧水と同じようなケアとして美容医療を取り入れたいと思っていたので、ぴったりでした」
施術を受けてからは、鏡を見ることが苦痛ではなくなった
「いつ鏡を見てもしわが寄っていないので、心が明るくなります。美人になったわけではないけど、自信につながるというか。仕事のオンライン会議のときに、相手の方から『痩せた?』って聞かれたんです。体重は変わってないんですけど、顔が引き締まったからだと思います。素直にうれしかったですね。子どもたちは全然気づいてくれないけど(笑)」
俳優を目指し始めたと言ったとき、娘は泣いて喜んでくれた
同世代の人にも、美容医療のメリットを知ってほしい。だから、自分も発信する側になりたいと思った。
「私たちの世代が美容医療と聞くと、見た目を大幅に変えるような手術をイメージして抵抗感を抱く人が多いと思うんです。でも、実際は外科的ではない施術や、肌のコンディションを整えるぐらいの軽い施術やケアもある。その事実を、私の経験を通じて発信したいと思いました。私自身、俳優を目指して外に出たばかりなので、知らない人に思いを届けるいい機会にもなるのかなって」
やりたいと思ったことは、自分に正直に実践してきた。道を切り開く楽しさや充実感も、たくさんの人に味わってほしい。
「結婚していた頃、『一人旅に行きたい』って元夫に相談したら、『子どもがいる母親が一人旅なんて、頭おかしいんじゃない?』と、言われたことがあります。でも私は、諦めないで自分のやりたいことをやっていいって思うんです。『女性だから』『母親だから』『シングルマザーだから』と、我慢している人もたくさんいると思いますが、チャレンジしてみてほしいです」
そう言えるのは、自分自身が俳優というチャレンジに踏み出すことができたから。
「社会人になって家を離れている長女には、テアトルアカデミーに入って3カ月くらい経ってから、俳優を目指し始めたことを話したんです。長女は『やっとやりたいことができるようになったんだね』って、泣いて喜んでくれましたね。子どもたちって、思っている以上に親の姿をちゃんと見ているんだと知りました」
盛さん自身、数年前までは仕事や子育てに追われ、やりたいことを我慢していたのかもしれない。しかし、今は“何歳からでもチャレンジできる”を体現している。
「年齢が高いほど、ある程度の限界はあると思いますが、何歳だって挑戦できるし、希望を持って続ければ成長できると思っています。“素直、前向き、成長好き”をモットーに、レッスンに取り組んで、演技力もアクションスキルも高めていきたいです!」