Documentary

「なぜ男はもっとメイクをしないのか?」
自分の感性を大切に生きる、美容好き青年の主張

2023.06.21
しゅーじ
取材・文:相羽 ゆづる
撮影:鈴木 真弓
しゅーじ 経験施術は、脱毛・フラクショナルレーザー。
2000年生まれ、東京都出身。美容YouTuberから情報を収集し、自己流のメイクやスキンケアに勤しむ。高校時代には1年間のニュージーランド留学を経験。理系の大学に進学後、2023年から渋谷のアパレルショップで働いている。趣味は音楽・ギター・ファッション・美容・メイク・映画・YouTube・英語etc。好きなバンドはcoldrain。母の影響でZARDとGLAYも好き。
「男が美容に気を使うなんて軟弱」。そんなことを言われる時代があった。だが今は、その価値観も確実に変化してきている。男性のスポーツ選手やタレントが、化粧品のCMに出演することも増えた。「美容は趣味」と言う2000年生まれのしゅーじさんは、そんな変わりゆく時代の先頭を走っているのかもしれない。メイクをして、日傘を差して、美容クリニックへ向かう。そこには、他人に何を言われても気にしない、自分のやりたいことを貫く強さがあった。

もともと自信がないタイプ
容姿に落ち込むことが多かった

取材スタジオに現れたしゅーじさん。ピンク色の髪に12個も空いたピアス、施されたメイクからはどんな人か想像がつかなかったが、少し話すと気取ったところがない好青年であることがわかった。口調も落ち着いていて、柔らか。見た目とのギャップに驚かれないか聞くと、笑いながら答えてくれた。

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさん。縦画像

「言われます。ホストとかバンドマンみたいと言われることが多いんですけど、中身は全然普通の人です。これで理系の大学に通っていましたからね。浮いてましたけど(笑)。子どもの頃から大人っぽい方だったと思います」

高校時代は根暗でオタク系でもあったと話すしゅーじさん。勉強が好きで、大人数でいると「端っこにいるタイプ」だったそうだ。

そんなしゅーじさんが“美”に目覚めたのは20歳のとき。受験に失敗をして、希望の大学に行けなかったことから精神的に病んでしまった。そこから自分を変えたい、強くなりたいと考え始め、まずは自信の持てない見た目を変えようと決心。原宿に服を買いに行き、美容系のYouTubeを見てメイクを学んだ。

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさんとしゅーじさんの化粧品

「もともと自信がないタイプで、容姿に落ち込んだり、自分を嫌になったりすることが多かったんです。そんなときに美容系YouTuberやアイドルを見ていたら、自分なりの個性的なメイクやファッションをしていて……。そうやって自分を表現すれば、自信を持てるようになるのかもしれないと思いました」

さらには、歯列矯正やメイクの邪魔になる青ひげと、前から気になっていた濃い体毛をなくそうと脱毛にも通い始めた。

「見た目を変えると自信がつく」ことを、服を通して伝えたい

メイクや脱毛、歯列矯正などを経て、急速に見た目を変えていったしゅーじさん。美しくなればなるほど、自分の中に自信が湧いてくるのを感じたという。

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさん。道路

「周りからは明るくなったねと言われます。友達とも自信を持って話せるようになり、人と1対1で飲みに行くことも多くなりました。男性だけでなく女性とも美容の話ができるようになったので、交友関係も広がっていきました」

大学卒業後は、アパレル会社に入社した。見た目を変えることで自信を持つことができた経験を、今度は服を通して他の誰かにもしてもらいたいと思ったからだ。

通っていた理系の大学では、IT企業を目指すのが主流。他にアパレルの道を選ぶ人はいなかったが、進路選択の際に周りの目は気にしなかった。現在では渋谷で、日々接客業務にあたっている。

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさん。インタビュー中

「まだ働いて数カ月なので知識はあまりないですけど、それでもお客様と関わる時間は楽しいです。昨日も働いているときに『コーデを組んでください』と言われて、自分が提案した服を購入していただきました。その人が自分らしく好きな服を着るのが一番だと思うので、そのお手伝いができればいいなと思います」

今の自分なら
アンチの声だって弾き返せる

取材の最中、しゅーじさんからは「自分らしく」という言葉が何度も出てきた。ファッションやメイクのこだわりを聞いても特にないそうで、あえて挙げるなら「周りの目を気にしないことがこだわり」だと言う。

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさん。歩き。縦画像

男性全体の美容への意識が変化しているとはいえ、偏見がなくなったわけではない。しゅーじさんのように、周囲を気にせず、人と違うことをする人は、多かれ少なかれ否定的な声や目にさらされるはずだ。そこまで「自分らしく」という姿勢を貫くのは難しくないのだろうか。偏見についてどう思うか聞くと、さらっと答えてくれた。

「もちろんいろいろな意見があるのは当たり前なので受け入れますけど、仮にアンチみたいなことを言われても、『自分はこうやって生きる』という強い意志を持っていれば、そういう意見も気にならなくなります。今って多種多様な生き方があっていい、ダイバーシティの世の中ですから」

他人の声を気にせず、自分の感性を守る強さ。「軟弱」とは正反対の印象をしゅーじさんの言葉からは受けた。そうした強さが生まれたのも、メイクと美容医療のおかげだと言う。

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさん。青空

「メイクと美容医療をすることで自信がついて、何を言われようが弾き返せる強い自分になれたんだと思います。2、3年前の自分だったら『もうダメだー』となっちゃったと思うんですけどね」

男性も10年後には
メイクをするのが当たり前になるかも

そんなしゅーじさんは、ふと疑問に思うことがあるという。それはなぜメイクは女性主流の文化なのかということだ。

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさん。窓際
アイラインやハイライトなどを使ったアイメイクや、ファンデーションで肌を整えているしゅーじさん。

「アイメイクとかリップは人それぞれでいいと思うんですけど、スキンケアとかファンデーションのように『肌を綺麗にすること』って、全男性がやっていいことだと思います。肌が綺麗になるのはメリットしかないのに、逆に何で今までやらなかったのか疑問でしかないです」

言われてみれば確かにそうかもしれない。取材の最後にはこんな未来の予見もしてくれた。

「女性はメイクをしなきゃいけないっていうマナーがあるのに、男性はそのままでいていいというのも不平等だなと思います。渋谷で働いていると、お客さんの中にはメイクをしている男性も多いですし、美容医療をしているんだろうなという人も来ます。最近は男友達でも、脱毛やメイクについて聞いてくる人が増えてきました。10年後には男性も、ビジネスマナーとしてメイクをするのが文化になっているんじゃないかと思いますね」

ONEドキュメンタリー取材しゅーじさん。外撮影。
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