エステから美容医療にシフト
再生医療の最先端をいく、キャリアウーマンの美の選択
撮影:有泉伸一郎
1976年、神奈川県生まれ。大学卒業後、製薬会社に入社。その後MRや安全管理業務担当者としてさまざまな製薬会社を経て、2年前に再生医療のベンチャー企業に転職。画期的な再生医療を世に送り出すために事業部長として奔走している。一男一女の母でもある。
コロナ禍を機にエステから美容医療にシフト
2年前、アメリカに本社があるバイオベンチャーの日本法人に転職した浦澤さん。事業部長として、これまでにない画期的な製品をリリースしようとしている。
「今、推し進めているのは、眼科領域の再生医療です。加齢や眼の疾患などが原因で角膜の細胞が減ってしまうと、本来の機能が失われてしまい、元に戻ることはありません。その減った細胞を補い、機能を回復させる再生医療に使用する製品の実現を目指しています」
2023年に入って製品が承認され、発売に向けた準備を始めている。浦澤さんは製薬業界に長くいたからこそ、現在の仕事に大きなやりがいを感じているという。
「世の中にあるほとんどの薬は、症状を抑えるためのもの。でも、再生医療は体の一部を根本からよみがえらせることができます。特に私が取り組んでいる眼科領域の技術は、クリアな視界が取り戻せるので、QOL(人生の質)に直結します。早く患者さんに届けたいという思いで、毎日仕事に取り組んでいます」
そんな浦澤さんが美容医療に興味を持ったのは、コロナ禍がきっかけだった。
「20代の頃からエステが好きで通っていました。でも、コロナ禍になって最初の緊急事態宣言でエステサロンや美容院が休業になってしまったんです。そんなときに、唯一開いていたのが美容クリニック。それまで選択肢に入れていませんでしたが、よく考えると美容クリニックならエステや高い化粧品を買うよりも効果がはっきりしています。医師や看護師さんに『機序(作用するしくみ)は何ですか?』と聞けば、きちんと答えてくれる。そこにあったのは、まさにサイエンスの世界でした。そういった点も私にはぴったりでした」
会社の出演ビデオで見つけてしまった“シワ”
フラストレーションがある状態で生きるのは良くない
コロナ禍をきっかけに美容クリニックに通い始めた浦澤さんが、まずやりはじめたのは、ピーリングやイオン導入、レーザーなどの肌のお手入れだった。
「ホワイトニングが気になっていたので、トラネキサム酸を導入したり、ピーリングやレーザー治療をしたりしました。あくまでエステの延長線上だったので、抵抗はありませんでした。肝斑もあったのでレーザー治療では難しいと思っていましたが、レーザーにも色々な種類があって、相談をしたうえで施術を受けることができ、全体としては肌質が良くなりました」
肌のお手入れでスタートした美容医療だったが、ある日、もう一歩先の治療に踏み切る日がやってきた。
「職場のプロジェクトの報告でビデオ出演する機会がありました。できあがったビデオを見ると、説明に熱が入ったときに、おでこにシワが寄っていたのを見て、ショックを受けたんです。一度気になってしまうと、他人の眉間のシワまで気になるようになりました。おでこや眉間のシワは一度刻まれてしまうと自力で元に戻すのは難しい。ボトックス注射をして、改善することにしました」
さらに昨年はクマ取りも行うなど、積極的な施術も行うように。こうした施術を後押ししたものは?
「とりあえず行って話を聞いてみようと思う性格なので抵抗はあまりなかったですね。それよりも、とにかく気になっていたので。基本は在宅ワークなので、向こう一週間、出社がない日を選んで施術しました。施術の二日後にオンライン会議がありましたが、誰にも気づかれませんでした。それに周囲のママ友も美容医療のお世話になっている人が多くて、まだ30代後半なのに、シワやたるみ予防で通っているママ友もいます。そういう友達が多い環境も、施術を受ける後押しになりました」
実際にやってみた今、気持ちに変化はあったのだろうか?
「特にボトックス注射はやってよかったです。“おでこのシワが嫌だな”とかフラストレーションがある状態で生きるのは良くないですよね。それが美容医療の力でなくせるなら、なくしたほうが良い。同じ業界で働く女性が仕事に没頭しすぎて肌にダメージを受けて疲れた印象でいるのをみると、“やってみたら?”と思っちゃいます」
自分に手をかけた分だけ自信が持てる。
でも美魔女にはならない!
浦澤さんは、スリムな体型をキープするのに毎朝体重計に乗って、食べすぎた分を調整したり、腹筋を欠かさなかったりともともと美意識が高い。美容医療を受けたあとは、さらに仕事に対してもメリットを感じるようになった。
「仕事関係の人にお会いするときに、手をかけた分だけ自分に自信が持てるようになりました。ある研修で、女性のメイクは社会貢献だと聞いて、そのとおりだと共感しました。どういう印象を与えるかもマナーなんですよね。男性にとっても女性にとっても、女性がきれいだと気持ちいいもの。自分はこれだけやっているという自信は、事業を切り開くうえでも後押しになり、積極的にのぞめるようになりました」
日々、再生医療は進んでいるが、美容医療の世界も進歩している。長年製薬業界に携わり、現在再生医療に取り組む立場から、どんなふうに美容医療が進化していくことを期待しているのだろうか。
「美容医療も研究が進んで、直接的に細胞の働きをよみがえらせるものが登場してくれると良いですね。私自身、昨年から白髪が見つかるようになりました。3週間ごとに白髪を染めに美容室に行くのはなかなか大変です。AGAの治療はあるのに、白髪を根本から解決する治療はありません。白髪が発生するメカニズムに注入してアプローチできる治療があると良いですね。同じように、根本からの肌の再生治療もあったらいいなと思います」
美容医療を受けたことで外見に自信をつけた浦澤さん。しかし、美しさへの思いはかえって内面に向かっていると話す。
「数年後、50歳になって美魔女を目指そうとは思いません。そうではなく、年齢を重ねるごとに中身が伴った女性が美しいと思います。憧れるのは、女優の草笛光子さんのように、いくつになっても若々しく輝いている方。見た目にも気を遣いながら、内面も充実させたいと思います。日々、仕事をしていろんな人に会いますが、私なりに元気を与えられたり、会えて良かったと思ってもらえたりする存在でいたいですね」
浦澤さんにとって美容医療は、毎日を上手に再生させるきっかけになっていた。