アライグマを溺愛し、患者の「心」を変化させる美容外科医に助けを求める人々——『美容外科医 山田美人』【漫画や小説の中の美容医療／第八回】
本作の主人公である美容外科医の山田医師は、悩める人の美と幸福を叶えるために“心のケア”に力を入れているドクターです。
そんな彼を信頼してさまざまな悩みを抱えた人がクリニックを訪れるのですが、彼は独特の感性も持ち合わせていて、なんと恋人がアフロディーテという名のアライグマ……。
漫画や小説を通して美容医療を客観視することで、“自分に合う施術”や“自分の見た目の正解”を探す本企画。8冊目は、美容医療がテーマでありながら、コミカルな要素が多めに散りばめられた作品『美容外科医 山田美人』（あおば出版）を紹介します。
＜オススメのポイント＞
1． 各エピソードを通して“心の在り方”の大切さに気がつく
2． コメディータッチで晴れやかな読後感
3． 山田医師の恋人・アフロディーテ（アライグマ）の溺愛っぷり
クリニックを訪れる「人」にフォーカス
山田クリニック院長・山田美人は高度な技術と専門知識を持つ敏腕美容外科医。クールなイケメン医師ですが、恋人はアライグマというシュールな面も持ち合わせています。
この作品はクリニックを訪れる人に焦点を当てたストーリーになっていて、エピソードごとにいろんなコンプレックスを抱えた人が登場します。美容外科クリニックの扉をたたく理由や背景はさまざま。山田医師はしっかりカウンセリングを行って一人一人の悩みや希望を丁寧に掘り下げています。
例えば、バストに関しても「胸が全くないので豊胸手術で大きくしたい」「授乳で胸がしぼんでしまったので形をきれいに整えたい」「胸が大きすぎてセクハラ被害に遭うので小さくしたい」など、人それぞれ悩みが異なります。
外見に対するコンプレックスや社会的なプレッシャー、自己肯定感の低下など、あらゆる要因が美容整形したい気持ちへと駆り立てます。
山田医師はそんな悩みを抱える顧客に寄り添い、ニーズに合った最適な施術を提案していくのです。そして、術後に理想通りの美しい外見を手に入れても、悩みが解決せずに苦しんでいるときは、さっと救いの手を差し伸べています。
外見を変える前に、“心の在り方”が大事なことに気づける
山田医師はアライグマのアフロディーテをこよなく愛するミステリアスな主人公ですが、高い技術力と患者の心に寄り添う姿勢を持った理想的な美容外科医として描かれています。
目鼻立ちを変える美容整形だけでなく、理想のバストをつくったり、顔の輪郭を変えたり、生まれつきの痣を消すなど、どんな悩みも解決に導いていきます。
確かな技術があるだけでなく、事前のカウンセリングやアフターケアで心のケアも怠りません。手術を通じて美しさを引き出すだけでなく、顧客の心理的なサポートも行っています。手術で美しくなってハッピーエンドではなく、術後の悩みや葛藤にも焦点を当てて、心から幸せになれる道を一緒に探っていきます。
複雑な事情を抱える人々が登場するのにどのストーリーにも暗さがなくて、コメディータッチで軽やかに描かれているので、気楽に読める作品です。読後に気分がズーンと重くならずに、心が晴れやかになれるエピソードが満載です。
美容整形で外見を変えることだけでなく、心のケアがとても大事だという気づきが得られます。
山田医師の恋人であるアライグマのアフロディーテや、悪徳美容外科医の天能寺麗哉など個性豊かなキャラクターも登場するので、推しを見つけることもできそう。
＜書籍情報＞
『美容外科医 山田美人』
出版社：あおば出版
著者：さかたのり子
恋愛モノからサスペンスまで幅広いジャンルの漫画を執筆。『美容外科医 山田美人』に登場する人気キャラ、天能寺麗哉を主人公にしたスピンオフ漫画『悪徳美容外科医 天能寺麗哉』もCHECK！
