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漫画や小説の中に“自分の見た目の正解”を探して【第三回】反ルッキズムをテーマにした衝撃作『ブスなんて言わないで』

2024.11.07 Text:Lisa Shiraishi
Text:Lisa Shiraishi
Text:Lisa Shiraishi
外見にコンプレックスがあって、メイクやファッション、美容医療などで美しく変わりたいと思っている人も多いはず。なかには世間の「美」の基準が正しいと考えて、少しでもその条件に近づくことで自分に自信を持てるようになりたいと思っている方もいるかもしれません。

でも、本当に見た目を変える必要があるのでしょうか。なぜ、外見にコンプレックスを持っている側の人間が変わらなくてはいけないと感じるのでしょうか。

今回は、そんな社会の風潮に問題提起を掲げる衝撃作『ブスなんて言わないで』(講談社)を紹介します。「ブス」と「美人」がダブルヒロインの漫画で、それぞれの視点からルッキズムについて深く考えさせられるストーリーです。

真逆の容姿を持つダブルヒロインがルッキズムの世の中に斬り込む!

山井知子は高校時代に「ブス」だからという理由でイジメられたことがトラウマで、なるべく人に顔を見せないように生きていました。友達は一人もおらず、外に出るときは常にマスクとメガネで顔を隠し、人と顔を合わせなくて済むバイトをしていて生活は苦しい。

ある日、知子は高校時代の同級生、白根梨花が反ルッキズムを唱える美容家として成功しているのを知り、激しい怒りがこみ上げます。知子は梨花がイジメの首謀者だと思っていたのです。

一方、白根梨花は美人に生まれついたことが悩みでした。美人というだけで知らない男子から告白されたり、女子から妬まれたり。そのため、高校時代はガングロギャルにイメチェンして、ガサツな言動で美人オーラを消す努力をしていました。

知子は梨花のことを自ら手を下さずにクラスのみんなを言いなりにしてイジメを行う首謀者だと思い込んでいましたが、それは完全な誤解だったのです。

世の中は「ブス」に厳しいけど、「美人」も誤解を受けやすい。真逆の容姿で考え方も異なる二人の視点からルッキズムの世の中について考えていきます。

変わることだけが正解とは限らない!コンプレックスに寄り添って生きる

梨花は反ルッキズムを訴えていますが、知子はなぜ美人がルッキズムについて語るのか理解できません。でも、そんな知子もイケメンと会話するときはウキウキして、頭ではルッキズム反対だと思っていても結局は美しいものに惹かれてしまう自分にジレンマを抱えています。

他にも、作中にはさまざまな容姿へのコンプレックスを抱えるキャラクターが登場します。顔はイケメンなのに低身長に悩んでいるカメラマン。ブサイクなキャラを売りに人気を博していたのに、容姿イジリがタブーな世の中になって仕事がなくなってしまった女芸人。摂食障害に悩んだ過去のあるプラスサイズモデル……etc。

それぞれ悩みを抱えていますが、この漫画は正解を示したり、解決策を描いていません。

知子は容姿に強いコンプレックスを抱えていても、美容医療をして自分の顔を変えたいとは思っていません。それでも、顔を隠して生きていた頃とは違って、少しずつ見た目や生き方に変化が表れていくのです。

ひとつの正解を導く漫画ではありませんが、いろんな悩みを抱えながら自分なりの生き方を模索していく登場人物たちの姿に激しく共感できます。

顔にコンプレックスがあるなら、メイクや美容医療で変身すればいい。それもひとつの方法ではあるけれど、見た目を変えずに自分自身を受け入れていく生き方を否定してはいけない。

変化することがポジティブで、変わらないことはネガティブだと単純に割り切ることはできないので、根を詰めて正解を見つけようとせずに、悩みながらも自分の居心地よい生き方を模索していけたらいいですね。

今、悩んでいるのは自分だけじゃない。ルッキズムに抗い「ブス」のままで生きる知子の強さに勇気をもらえ、視野が広がり新しい価値観に出合える漫画です。

<書籍情報>
『ブスなんて言わないで』1~4巻
出版社:講談社

著者:とある アラ子
漫画家。東京都出身。著作『美人が婚活してみたら』(小学館クリエイティブ)が漫画アプリ「Vコミ」で累計1000万PVを突破し、映画化もされている。2021年より漫画サイト「&Sofa」で『ブスなんて言わないで』を連載開始。

取材協力

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