お客様へのホスピタリティのために。
銀座のホステスが選択した自己投資先
撮影: SHOTA SOTODATE
夜の蝶・ホステスに選ばれている
“自己投資”としての美容医療
銀座のクラブで働く「ホステス」といえばどんなイメージを持っているだろうか? 接客を伴う水商売には、キャバクラ、ガールズバー、スナックなど数多くあるが、その中でも銀座のホステスは格上のイメージがあるのではないだろうか。
芹澤さんがホステスの仕事を始めるきっかけになったのがコロナ禍だ。それまで空港内のグランドスタッフとして働いていたが、旅行業界がコロナ禍の打撃を受けた影響もあり、会社が早期退職者優遇制度を導入したタイミングで退職。その後、高級料亭の仲居さんを経て、1年ほど前から銀座のホステスとして働いている。芹澤さん自身が「どこかのタイミングで、お客様をもてなしながら接客業のスキルが磨けて、人生経験までできる銀座のホステスの仕事を体験したい」と思っていたことも背中を押したという。
銀座のクラブは、非日常的な華やかさがありながら、くつろぎを感じさせる特別な空間だ。席料が高く、企業の接待などに利用されるという。
「来られる方は落ち着いた雰囲気で、40歳以上がほとんど。ベンチャー企業の社長さんは少し若いですが、お客様の9割が社長様ですね。お越しいただくお客様は接待としてクラブを利用されることも多く、私たちホステスの身なり、立ち居振る舞い、空気を読む判断力が、お客様の大事な契約にもかかわってきます。滞りなく皆さんに楽しんでいただける場をつくるのが、私たちホステスの大切な仕事なのです」
身なりを美しく整えることはホステスの最低限のマナー
出勤前は、契約している美容室へ行き、髪の毛をセットしてもらっているという。そうしないと出勤すらできないそうだ。ヘアセットはもちろんだが、ドレスからメイク、ネイルまで手を抜かない。ホステスのレベルは、お店のイメージに直結するため、身なりをきちんと整えるのは、最低限のマナーだという。
こうした努力を芹澤さんが続けているのも、ホステスが厳しい世界であることを、身をもって知っているからだ。芹澤さんはホステスになりたての頃、指名をもらえる機会が少なく、一度クビになる苦い経験をしている。
「指名が取れず、ヘルプとして席に呼ばれることがなければ、即刻クビを言い渡される厳しい世界なんです」と芹澤さん。美容やファッションに投資をして、お客様を満足させるレベルまで自分を引き上げていかないと、東京の一等地・銀座では生き残れないのだ。
自分の価値を高めることで、新たなご縁が生まれる
美容医療も、自分の価値を高めるための一つの選択だ。
「銀座のお姉様方は、何かしら美容医療をされていますね。鼻だったり、目だったり、胸だったり。おおよそ9割くらいの人はメンテナンスとして美容医療を取り入れているのではないでしょうか。実は私、これまで何も(美容医療を)してこなかったんです。でも、前の店舗にいた何百人と女の子たちを見てきた銀座クラブの紹介業者の男性の方に、『(銀座のホステスとして働くのであれば)30代を甘く見ちゃダメだよ。自分を変えていかないと』と言われたこともあって、去年の7月くらいに長年コンプレックスだった鼻の施術に踏み出しました」
ヒアルロン酸を鼻先に入れて高さを出し、さらに横顔がキレイに見えるように、あご先にもヒアルロン酸を入れた。さらにエラ張りと眉間のシワが気になっていたところには、ボトックスを打っている。
「メスを入れる施術ではなく、ちょっとした施術ですが、お客様の反応が変わりましたし、安定的に働けています」
芹澤さんの頑張りもあり、お給料は航空会社に勤めていた時代よりもアップしたと話すが、ヘアセットも洋服もネイルも、もちろん美容医療も全部自腹だ。お給料の多くは自己投資に費やされるが、それもホステスという仕事に向き合う上では、必要なことだと考えている。
また、こうした努力によりお客様と縁が生まれ、そこから世界が広がることもあるという。
「たまたまお店にいらっしゃったお客様が、私と同郷で話が盛り上がったんです。そこから私が情報処理の資格をもっている話になり、それがきっかけで短期間ではありますが、海外でその方の仕事のお手伝いをする機会をいただきました。こうした偶然が生まれるのも、このお仕事をしていて面白い、と思うところです」
内面も磨いて、お客様をハッピーな気持ちにさせたい
「私がいる店舗は、ママさんが明るい方なので明るい女性が多いです。入れ替わりが激しい世界ですが、うちの店舗はママさんをはじめ、明るく優しい子も多くて居心地がよく、スタッフの入れ替わりは少ない方だと思います」と芹澤さん。
ママとスタッフが一つのチームになってお店を盛り上げていくが、スタッフはそれぞれ、
お客様との話が弾むように、会話を引き出す自分磨きも必要だ。
「仲間はみんな自分磨きに励んでいますね。出勤前までに小説や経済新聞を読んだり、ネットニュースを見たり。自発的にみんなそうなります。内面を磨かないとお客様と会話のキャッチボールができませんから。受け身で仕事をしていると続かなくなってしまうので、ほとんどの子は能動的に勉強しています」
今後も内面、外見ともに自分を磨き続けていく。
「身なりに関しては、ママがアドバイスをしてくれます。内面磨きでいえば、近年、韓国やアメリカ、シンガポールなど海外からのお客様も増えているので、語学力をもっと磨きたいです。先週、韓国からのお客様がいらしたのですが、そのときは英語を介してコミュニケーションをとりました。もし、韓国語でご挨拶やお話ができれば、お客様にも喜んでいただけて、そのお客様が新たなお客様を連れてきてくださいますから」
ママから教えてもらったのは、この仕事は「自分がハッピーであることが大事」、ということ。
「『お客様を楽しませるためには、自分がまずハッピーでいないとダメ』とママに言われました。暗い子や悩みを抱えている子だと、お店の空気も士気も下がってしまいます。お客様はそれを見抜いてしまうから、まず内面も外見も磨いて自分の芯をしっかりと持つこと。そして、自らが華になりハッピーオーラを放つこと。それがお客様を楽しませることにつながると思うのです」
お客様と会って受け取ったエネルギーを、接客を通してお客様に返していく。ホステスの仕事を通して積み重ねてきた内面と外見磨きは、お客様だけでなく自分をも幸せにするものなのだ。