Documentary
Documentary #Fashion #Beauty

ウクライナ人モデルKATYA.Yの転機、“自分はただ一人の特別な存在”というマインド

2022.08.03
KATYA.Y
取材・文:岡本のぞみ(verb)
撮影:有泉伸一郎(SPUTNIK)
通訳:ウリヤーノワ・スヴェトラーナ(吉香)
KATYA.Y モデル。2001年ウクライナ・キーウ生まれ。18歳の大学進学時にモデルエージェントに登録。イゴールシコルスキー記念国立キーウ工科大学の通信過程で学びながら、モデル活動をスタート。韓国での活動を経て、2022年4月から日本に活動拠点を移す。5月に「Rakuten Fashion ウクライナチャリティステージ」のランウェイを歩いた。
生まれ育ったウクライナ・キーウを離れ、アジアでモデルとして活躍するKATYA.Y(カーチャ)さん。夢だったというモデルの仕事で世界に飛び出してみると、さまざまな価値観があることに気づいたという。そうしたなかで見つけた、自分の個性について話を聞いた。

「19歳はもう大人」モデルになるための、心の準備はできていた

20歳のカーチャさんは、19歳までキーウで両親や弟、妹と暮らす普通の学生だった。世界へ飛び出す転機はある日突然訪れたという。

KATYAインタビュー

「子どもの頃からモデルに憧れていました。けれど、私の身長は169cm。ヨーロッパのスタンダードからすると決して高いとはいえません。いっぽうで、私の身長でもアジアならば活躍できるという話を聞き、それなら私の個性を生かすことができる!と思ったものの、エージェントはなかなか見つからず……。それから数日後、突然エージェントからオーディションにきてください、と連絡があったんです」

そのエージェントとは、ウクライナに拠点があり、海外にモデルを派遣する会社。くしくも、大学進学のタイミングだった。

「それまでエージェントが見つからなかったので、モデルの道は半ばあきらめ、大学進学のための勉強をしていました。実際、ウクライナではトップレベルのイゴールシコルスキー記念国立キーウ工科大学に進学が決まっていたのですが、モデルは子どもの頃からの“夢”、このチャンスは見逃せません。当時はコロナ禍で、いずれにせよ授業はリモートがメイン。モデルと学業は両立できると思い、エージェントの話にのることにしたんです」

エージェントの登録が決まるとポートフォリオの撮影をして、海外のエージェントから仕事がくるのを待つことになる。

KATYAインタビュー

「大学に進学した去年の秋、初めて韓国での契約が決まって海外に行くことになりました。そういう話は突然くるものですが、心の準備はできていました。19歳はもう大人、両親は心配していましたが、私の意思を尊重してくれたので、反対はありませんでした」

モデルの仕事は、“プロセス”も好き

2021年秋、韓国に渡り、いよいよ海外でのモデル生活が始まった。

「当時は、海外どころかモデルの経験もゼロ。なんでもぶっつけ本番でモデルの仕事に挑んでいました。大変といえば大変ですが、それ以上にワクワクしていたのを覚えています。モデルの機会があること自体がうれしくて、なんでも前向きに取り組んでいましたね。ただ、韓国の辛い食べ物が最初は肌に合いませんでした……(苦笑)」

エージェントによる海外モデルの仕事は3ヶ月ごとの契約となる。韓国の契約は満了し、一旦帰国。ウクライナで次の契約を待っていると、今度は日本から声がかかり、2022年の4月に来日した。日本でのモデル生活とは、どのようなものなのだろう?

KATYAモデル立ち

「モデルの一日はハードです。オーディションが一日にいくつもありますし、私の場合は大学の授業もあるので、時差があってとても大変。アルバイトなんてできません。日本で3ヶ月の契約があるといっても、どれだけ仕事があるかの保証はなく、オーディションで仕事を勝ち取らなくてはなりません。モデルの仕事は、競争が激しいことを理解してクライアントを見つけるしかないんです」

一見、つらいことばかりのようだが、カーチャさんにとってモデルの仕事は魅力的なようだ。

KATYA梯子寄りかかり
KATYA梯子寄りかかり

「モデルの仕事は、プロセスも好きです。正直、数時間立ちっぱなしということもありますし、競争も過酷です。でも、それ以上に『オーディションに合格して、撮影して、やりきった』というビジネス全体をおもしろく感じます。オーディションに合格すれば、個性が認められたということ。撮影では、認められた自分の個性を発揮しながら、“求められることにどれだけ適応するか”が何より大切です」

そんな責任感が強いカーチャさんだが、来日して最も達成感を得たのが故郷にまつわるイベント。

KATYAインタビュー

「5月に幕張メッセで『Rakuten GirlsAward 2022 SPRING/SUMMER』が開催され、そのうちの『Rakuten Fashion ウクライナチャリティステージ』というウクライナ応援イベントのファッションショーのステージに立ちました。ファッションショーでは、11人のウクライナ人モデルの一人として抜擢。私たちは、ウクライナ国旗のカラーの洋服を身にまとってランウェイを歩きました。有名なウクライナ人の歌手もきていましたね。ランウェイでは、お客さんの反応がわからないくらいフラッシュがたかれていましたが、自分のなかではこれ以上ないほどのやりがいを感じました」

世界各国の多様性と“自分”

アジアで活動してみると、各国のさまざまな文化や価値観の違いに気づいたカーチャさん。ヨーロッパとアジア、ウクライナと日本の違いとは?

「先ず、文化やコミュニケーションの違いですが、日本の方は穏やかで、礼儀正しいですね。ウクライナ人は、オープンな人が多くストレートに物を言います。世界的にも言いすぎと思われるかもしれませんが、それは“嘘をつかない正直さ”でもあるんです。皆ポジティブで、お互いにネガティブなことを言わない。日本の方もオープンにコミュニケーションできれば、今より少しだけ生きやすくなるかもしれません」

KATYAモデル立ち

また、カーチャさんから見た、日本の美意識についてはどうか。

「アジアとヨーロッパで大きな違いを感じたのは、肌の色に対する美意識です。日本やアジアでは、肌が白いのが良しとされますが、ヨーロッパでは日に焼けたほうが素敵だとされます。ですから、ウクライナで日傘をさしている人はいません。私自身、日光浴して肌を焼く行為も、日焼けした小麦色の肌もいいなと思います。ただ、いまは肌を焼いてはいけないと言われているので、できません(笑)。また、ウクライナでは唇がふっくらしていて目が大きい人が美しいとされます。欧米でも、一般的にアンジェリーナ・ジョリーのような女性がキレイと言われていますよね。でも、私は外見を手入れすることは大事だと思いますが、内面も大事だと思うんです。目の大きさや口は、大きければいいわけではなく、それぞれの良さがある。理想や憧れに左右されることはあるかもしれませんが、結局は、その人の個性が一番。“自分を知り、磨き続けることが大事”。それはつまり、内面の強さであるということだと思います」

こう聞くと、カーチャさん自身も自分に自信を持って活動していそうだが、そんな一面ばかりではない。

KATYAアップ
KATYAアップ

「実際、モデルになるとコンプレックスに感じることは増えていく一方です。そんなときは、体を動かしたり、気持ちの整理をしたりして乗り越える必要があります。メンテナンス的な意味では、スキンケアなど美容医療も考えられます。コンプレックスを克服したり、コンディションを整えるための手段は増えてきたように思います」

世界に出て周りを知ったことで、以前よりも自身について考えるようになったというカーチャさん。

「今後しばらくはモデルの仕事をやっていく予定です。仮の話ですが、25歳を過ぎたら仕事がなくなるかもしれません。でも、そのときのために大学で勉強しています。やりたいことがあるなら、本気でやる。でも、だからといって、ひとつのことに縛られる必要はないんです。自分のために、生きていきます」

KATYAバストアップ笑み
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