美しくいる、人生を楽しむ。
自分が輝くことによって、周囲も輝かせられる
撮影: 森山 越
フリーランスのネイリストとして、地元三重だけでなく、定期的に東京の顧客にも対応するなど、アグレッシブに活躍している。また、女性だけではなく、男性へのネイルも手がけている。現在熱中しているのは大型バイクでのツーリング。
ネイルのデザイン見本は
あえてつくらないのがポリシー
待ち合わせ場所に現れた橋本さんは、とてもスリムで肌のツヤも良い。事前に聞いていた50歳という年齢を疑ったほどである。
「でも、いろいろと気になる部分も多くなってきているんですよ」
とは言え、さすがはネイリスト。美容に携わる専門家として、その印象は鮮やかなものである。橋本さんは22年間、ずっとフリーランスのネイリストとして活躍している。
「ネイリストを要請する学校に通い、協会の検定に合格して初めて講師になれるのです。そのときからずっと組織には所属せずに仕事を続けてきています」
個人で仕事をしていくためには、一人一人のお客に対してマニュアル通りの仕事をしていては続かない。何故ならその仕事ぶりが口コミで伝わっていくことで、活躍の場が広がっていくからだ。ありきたりなネイルでは評判は伝わっていきにくい。それは他のジャンルでも同じだろう。では橋本さんのネイルはどのようにして評判を得ていったのだろうか。そのひとつは、ネイルデザインの見本をつくらないことにある。
「ネイルの図柄の見本帳をつくって、そこから好きな図柄を選んでもらうという方法があるのですが、私はそれはイヤなんです。お客さん一人ひとりと話をして、どのようなネイルを望んでいるのかを徹底的に聞いて、希望を実現させてあげたい。なかなか大変な作業なのですが、でも、私にとってはそれこそ楽しい作業でもあるのです」
それはネイリストとしての矜持でもあるのだろう。だがその真摯な姿勢がお客から周囲の人たちへとジワジワと広がっていき、今のフリーランスとしてのポジションを得たのではないだろうか。また橋本さん自身がおしゃべり好きというのも、お客との距離を縮めている。
「ネイルをしながらお客さんと話すのは、仕事のこと、日常生活のこと、趣味のことなど、ネイルとは関係ない内容の方が多いかもしれません。でもそんな話の中からそのお客さんの人柄がわかっていきます。プライベートな話ができるようになると、より心を開いてくれます」
そう、人生相談だってOKなのである。そんな橋本さんの人柄もまた、人を呼ぶのだろう。もちろん、ネイリストとしての技量も信用していることは言うまでもない。
「普段何かしているのですか?」という質問に、糸リフトとハイフの確かな効果を感じている
やはりネイリストという職業柄、見た目には相当気を使っておられるのか。
「若い頃はぽっちゃり体型だったんですよ。それが長男を出産してガタっと痩せました。その頃は肌にもまったく気を使ってませんでしたし」
しかし年を重ねるにつれて、肌のシミが増え始めたり、体型が気になりだしたという。これは万人の悩みだ。
「ですからここ数年は自宅で筋トレをしたり、食べるものにも気を配って選ぶようになりました」
そうした意識の効果なのか、体型は年齢を感じさせない。いや、20代の若者にも引けを取らない。これを維持するには相応の努力が必要なはずだ。フリーランスのネイリストとして、自分自身を美しく保つこともまた、重要なことなのである。常に人に見られることを意識し、できる範囲は綺麗にしていたいと考えている橋本さん。昨年、長い付き合いのお客からこんな話を聞いた。
「そのお客さんの友人が糸リフトを行なって、それがとても良かったと教えてくれたのです」
若い頃に比べれば、顔のたるみが現実的な問題となってくる。それは致し方のないこと。橋本さんもその問題に直面しつつある時期だった。話を聞いたのが信用のおける知人だったこともあり、糸リフトによる施術を行ってみたいと思い始めた。
「そこで私もカウンセリングを受けてみたのです。話を聞いて、すぐにやってみようと思いました」
実行力がある、というのも橋本さんのポジティブ・ファクターなのである。施術を受けるに際し、不安などはなかったのだろうか。
「どれくらい顔が腫れるのだろうか、という不安はありました。でも誰かに相談するということもありませんでしたし、こうしたことを相談するような人もいなかったですし」
そして昨年10月、糸リフトの施術を行った。その感想は。
「施術の翌日には東京でネイルの仕事がありました。このご時世でマスクをしていたので顔はほとんど隠せていたのですが、口は開きづらかったですね」
だが、顔もそれほど腫れることはなく、イヤな感じではなかったと橋本さんは言う。美容効果はどうだったのだろうか。
「コラーゲンが出てきたのか、肌質が以前よりも良くなってきました。それと、メイク時に鏡で顔を見ると、良くなっているのを実感できます。だから今はメイクするのも楽しいんです」
糸リフトの施術を行った後、さらにこんな話を聞いた。“糸リフト後にハイフを行うと、持ちが良くなる”。それならば、と糸リフト施術の1カ月後にハイフも行い、とても満足のいく結果となったそうだ。糸リフトとハイフを経験した後、知り合いやお客が橋本さんの顔を見て、「普段何かしているのですか?」と尋ねることが何度かあったという。橋本さんは隠すことなく施術を行った話をしている。
「私の体験談を聞いて、施術を決心した人もいるんですよ」
一方で、橋本さんの長男はそっけない。母親の美容施術の話を聞いた長男は、「言われてみれば、そうかな」という答えだったそうだ。母として、それは少し残念なこと、なのだろうか。いずれにせよ、橋本さんは仕事柄、美容全般に対する関心は昔からあったため、美容医療には肯定的だ。
「ちょっと前までは、美容医療に対しては批判的な意見が多かったですよね。でも今はほとんどエステ感覚で、とてもオープンになってきました。エステでは限界のある部分を、こうした施術で対処できるというのはとてもいいことだと思います」
ただ、やはり地方都市にはクリニックが少ない、とも言う。
「地方でも、美容医療に興味のある人はとても多いと思うんですけどね」
「会うと元気になる」
これからもそんな存在でありたい
橋本さんは2年ほど前に、なんと大型バイクの免許を取得した。大型、である。
「お客さんの一人にモータージャーナリストの方がいて、その方を通してバイクに興味を持ちました」
その流れで片岡義男の『彼のオートバイ、彼女の島』という小説を読む。片岡義男と言えば、1980年代に青春を過ごした者にとっては、カッコいいライフスタイルの象徴でもあった作家である。この小説を読んだ二日後に、橋本さんは教習所に通い始めた。そして無事に大型バイクの免許を取得し、半年後には『彼のオートバイ、彼女の島』の舞台である岡山の島にツーリングに出かけている。
実にアクティブだ。ネイリストとして他の人たちの美を演出し、その人柄や話しぶりが人を前向きにする。さらには思い立ったらすぐに行動、という生き方が、すでに周囲の人たちにとっての憧れの存在となっている、と感じられる。
「チーちゃん(橋本さん)に会うと元気になる、ってよく言われるんです。ネイリストは自分が一番のサンプルにならなければいけない、と常々考えているので、嬉しい限りです」
橋本さんのような人が周囲にいたら、確かに自分ものメンタルも急上昇していくように思える。周囲へのそうした効果を維持していくひとつの手段として、美容施術があるのだろう。橋本さんもそれは十分に理解しているようだ。