自己投資は「前向きになるために必要」
納得できる自分をさがす、パラリーガルの選択
撮影: 森山越
1987年生まれ、福島出身。美容師や歯科助手、IT企業の営業職などを経て、2023年8月から法律事務所でパラリーガルとして働く。10月からは中央大学法学部通信教育課程に進学。
子どもの頃の夢はパラリーガル
でも諦めるしかなかった
子どものときから法律の仕事に興味があったという山本さん。そのきっかけは、テレビドラマを観たことだった。「困っているクライアントを法律の知識や知恵を使って救っていく姿がかっこよくて憧れました」と山本さんは話す。
「将来は大学で法学を学びたくて、高校は頑張って進学校に入ったんです。でも経済的な事情で諦めざるを得なくて……。ただ、進学校まで出たのに最終学歴が高卒というのが自分で許せなくて、上京してアルバイトをしながら学費の安い美容専門学校に通いました」
美容師のほかにも歯科助手などの経験を経て、22歳で結婚。男の子のママになった。
仕事や家庭で試練があっても、へこたれてはいられない
しかし、幸せな結婚生活は長くは続かなかった。
「元夫は浪費癖と浮気癖のある人で、私はワンオペ育児と経済的な不安で心身の休まる日がありませんでした」
もうこの人とはやっていけない――そう思ったとき、山本さんは「経済的な自立が必要だ」と思い立つ。そして派遣会社に登録し、電子決済サービス会社で契約社員として働き始める。営業成績もよく、仕事も楽しかったが、1年ほどで事業整理に合い、別の会社へ。その後、また別のIT企業に転職したが、またもや試練がまっていた。
「私、新任4カ月にして1年分の売上を出したんですよ! でも、女性の活躍を面白く思わない男性執行役員から嫌がらせを受けてしまって、一時は寝たきりで何もできない状態になりました。そのストレスで太ってしまったのですが、そんな私を見た元夫が『女として見れない』と暴言を吐いてきて。ショックでしたね」
結局4カ月休職した後に退職。次々と試練が山本さんを襲ったが、山本さんはへこたれなかった。
「働くことは好きだし、私には守るべき息子がいる。弱ってばかりはいられません。それに退職して、元夫とも離婚したことで、精神的には吹っ切れました」
ここから山本さんの“再生”が始まる。
自己投資は、
前向きになるための選択
まず取りかかったのは、元夫や上司の暴言で傷ついた自尊心を癒し、自信をつけること。若い頃はスレンダーな体形だったという山本さんは、かつてのボディラインを取り戻すためダイエットに励んだ。
「食事制限とYouTubeで自重トレーニングのやり方を学んで取り組みました。1カ月で5キロくらいは痩せたのですが、そこからが減らず、自力でやることの限界を感じました。どうせ仕事をするならと、憧れだったパラリーガルの仕事を始めるまでに、少しでもキレイな自分になるためには、どうしたらいいかと考えて、短期間で理想に近づける美容医療に興味を持つようになりました」
心に余裕ができたことで、「我慢せずにやりたいことをやろう! 自分が前向きになるための投資をしよう」と考えることができた。また、「キレイになって元夫を見返してやりたいというモチベーションも大きいです!(笑)」と山本さんは話す。
美容医療で最初に行った施術は、瘦せやすい体質に変化するというサクセンダ注射。効果を感じた山本さんは、涙袋・バストのヒアルロン酸注射や脇のボトックス注射、脂肪吸引、鼻プロテーゼなどにも挑戦。直近では7月に目尻切開による垂れ目形成も経験した。美容クリニックのモニター制度などもうまく活用しながら、気になる部分のケアに余念がない。
「もともと私は自分の顔に自信がなくて、顔を変えたい願望があったので、美容医療そのものに抵抗はありません。今は薄めの化粧でもよくなりました」
信頼できる医師がいるから
安心して施術が受けられる
山本さんが最も効果があったと感じているのは、ベイザー脂肪吸引という超音波を用いた施術とピュアグラフトという豊胸のプログラム。
「私の場合は、内ももから取った脂肪をバストに入れました。本来は太ももの前面と後面から脂肪を取るのが基本らしいのですが、担当してくれた先生が私の希望や実際の肉付きを診て、『内ももからがベストだね』と言ってくれたんです。個人の性質や医学的にきちんと可・不可を判断してGOサインを出してくれたので、安心して受けられました」
いくつもの美容医療を経験した山本さんに、クリニック選びのポイントを聞いた。
「クリニックによっては最初の見積もりから何十万もの高い施術代を請求されたこともあります。だから、明朗会計であることは大事! 何でも話せる腕の良い医師がいることも外せない条件です」
山本さんは今後も目元のクマ取りや糸リフト、レーザーのシミ取りなどをしてみたいと考えている。
「自分に自信をつけて、元気な笑顔で仕事ができるように。法律事務所に困りごとを抱えて来るクライアントにも、明るい気分を分けてあげられたらいいですね」
「行政は弱者を守ってくれない」と痛感
新たな夢に向かって走り出した山本さんだが、実はパラリーガルの先に、もっと大きな目標がある。それは政治家になることだ。
「私は離婚を前提に別居していた時期があるのですが、まだ婚姻関係にあるということで、ひとり親世帯向けの手当や支援の対象外になってしまい、孤独で心細い日々を送りました。だから、法律の知識と経験を身につけたうえで政界に進み、社会的に弱い立場にいる人たちが泣き寝入りしなくて済む社会にしたいですね」
自分が苦い経験をしたからこそ、他の人には同じ思いをさせたくない。正義感と優しさに溢れ、行動力のある山本さんのような人が、法律や政治の世界にはふさわしいのかもしれない。