世の中ではそんなふうに思われていますが、実は容姿が良いことで苦労しているという声を聞くこともあります。
今回は、なかなかオープンにならない美人側の苦労をクローズアップ。顔や見た目の研究をしている、心理学者の山口真美先生にかわいい子に対する偏見の真相について、話を聞きました。
かわいい子って実は、見下されている

――かわいいとすべてがうまくいく、そんな風潮がある一方で、美人に生まれると苦労するという話もあるようです。心理学的にはかわいいと損をしてしまうのでしょうか?
いま、「かわいい」と「美人」を同じ意味として質問を受けましたが、実はかわいいと美人では心理学的な影響が異なってきます。美人かそうでないかは美醜の問題で、人の印象判断の範疇ですが、心理学的なベースになっているのは「格上」か「格下」か。そこに偏見が生まれるということです。
つまり、人間は出会った相手のことを、かわいいかどうか以前に、とっさに「格上か格下か」で判断しているのです。たとえば、私たちは人に道をたずねるとき、変な人かそうでないかを見きわめて、ちゃんと道を教えてくれそうな人に声をかけますよね。それと同じように無意識で相手に上下をつけています。
――たしかにそうかもしれません。「かわいい」と「美人」では格下・格上が違ってくるということでしょうか?
そのとおりです。そもそも「かわいい」と思うのは、守ってあげなきゃいけないという子どもに対する生物学的な保護本能に由来しています。日本発の「かわいい」は文化にもなっていますが、世界的に見ると格下の扱いなのです。
日本人にとって「かわいい」は、魅力的で惹きつけられるものがありますが、その反面で格下に思われているのは世界共通。格下なので、苦労しているというのは当然のことなんです。
かわいいより「得する顔」ってどんな顔?

――かわいいが格下だったとは。では逆に美人だと優遇されているということですか?
欧米の研究では、リーダーに選ばれるのは年上に見える顔、ということがわかっています。あごに主張があって面長、骨格がしっかりしている顔立ちが信頼を獲得しています。美人かどうかというより、大人顔かどうかというところがポイントです。
――大人っぽい顔のほうが得なんですね。
そうとは限りません。社会にもいろいろな次元があって、幼い顔だと失敗しても故意じゃないと思われたり、かわいがられたりはします。
逆に大人顔の人が失敗すると老獪さが見え隠れするので、そういう意味では損をします。自分の顔がどんな状況で好かれるかは知っておくと良いかもしれません。
人知れず、かわいい子に起きている悲劇

――かわいい子に「どんなことで損をしていると感じるか」をリサーチすると、以下のような話が聞かれました。

一般的にはかわいがられるので、周囲から見れば「損よりも得をしている」と思われることが多いと思います。それが理由で、影で努力をしていたとしても認められにくいのかもしれません。
さらに、格下に思われているので、「努力していないのに、認められていいね」と言葉に出して言われやすいこともある。そこらへんはつらいでしょうね。
――同性や同僚からの妬みですね。あとは男性関係のトラブルもありそうです。恋愛だけでなく犯罪に巻き込まれやすいことも含めて。
あると思います、格下に思われているので、なめられやすいところでちょっかいを出される。さらには「格下なのになぜ俺を受け入れてくれないんだ」と、逆上されることもある。若い女性にとって男性の汚い本性をむき出しにされるのはきついと思います。
――特殊なケースかもしれませんが、大学のミスコンでは、SNS審査に投票する男性の支持を集めようと、幼く見えるような薄いメイクをしている出場者が多いと。ミスコンで票を獲得するために、そうした演出を余儀なくされているのはどうなのかなと思いました。
インターネットやSNS上に集まる男性は、格下の女性を好むので、そうなってきますよね。でも、現実世界のほとんどの男性はそうではないということを知ってほしいです。
――SNSでは「27歳なんてBBA(ババア)」のような書き込みが日常的にあふれていて、年をとればとるほど、女性の価値は下がるという風潮があります。
実際にはそんなことはないですよね。
若いほうがかわいいというのは幻想で、さまざまな年齢層の男性に意見を聞くと、そんな意見は少数派。自分に自信がない、それこそ社会的に“格下”の男性がSNSで無責任に声を大きくしているだけ。
そんな闇を抱えた人たちには一切近づかないほうがいい。おかしな意見は、気にしないでと言いたいですね。
世の中がかわいい子の苦悩に気付けないのはナゼ?

――こうして見ると、かわいいと妬まれたり誤解されたりすることが多く、その苦悩に社会が気付けない問題もあるのかなと思いました。
その立場になってみないとわからないつらさはあると思います。いまの社会は容姿のすぐれない人への偏見に対しては「言っちゃいけないよね」と同情する風潮はありますが、実はその逆もあるのに、なぜかそこは取り上げられない。
本当のルッキズムの解消は「言っちゃいけないよね」ではなくて、誰かが容姿で嫌な思いをすることがなくならないと意味がない。
その人が努力してきたことや生きてきた歴史を容姿1つで全部踏みにじってしまうところに問題があるのです。
――社会の中でまだまだルッキズムの歴史が浅いので、そこに気づけていないということなんですね。
そうですね。それを大っぴら問題提起して話し合える場ができるといいですね。
先ほども話したとおり、かわいい子と大人っぽい美人の子は同じくくりにされがちですが、苦悩が違います。大人っぽい美人だと期待値が高くてできて当たり前と思われるし、かわいい子は努力が認められにくい。
まずは、誰にでも違う苦悩があるということを、お互い知ることが大切だと思います。
かわいい子が幸せになるために必要なもの

――ルッキズムは容姿の良し悪しにかかわらず存在することがわかりましたが、実際にどのような処世術を身に着けたらよいでしょうか?
先ほどもふれましたが、幼稚で愚かな人の意見には耳を貸さないことです。
せっかくのかわいさを感情の発散の対象にされてはたまりません。かわいいことを消費の対象にされたままにしていると、せっかくのかわいいエキスが吸い取られてしまいます。
かわいい子は意識が高いからこそ、世の中の声に敏感に反応してしまいがち。そうではなくて、自分が上がるものを積極的に見ていかないと。
ネット上の嫌な意見を見てしまったら、その分同じだけいいものを吸収する。プラスマイナスゼロにしないとどんどん良さが吸い取られてしまいます。
――ネット上の意見に振り回されて、若さ至上主義になった結果、将来の自分を苦しめていくんじゃないかと懸念しています。
かわいいは10代、20代だけのものではありません。
30代、40代、50代でもかわいい人はかわいいのです。その年代ごとに旬のかわいさがあって、それは何かというと外見と中身がぴったり合っていること。自分の中身を年代に合わせてブラッシュアップしていけば、27歳で終わりなんていうことはありません。
日本を飛び出して海外に出て、いろいろ経験してみてもいいですよね。10代20代のかわいさに固執している人の声は無視して、成熟したかわいさがあることを見つけてもらえたらと思います。
――それはどんな人に対してもいえますよね?
今日は年下に見えるかわいい人や大人っぽく見える美人という軸で話しましたが、その2つだけじゃなくて、日本人っぽい顔とか外国人っぽい顔とかいろいろな軸が存在しています。
私たちは日々、他人に対して勝手な印象を持って格付けしているのは間違いありません。見た目で印象をつくりあげることで、上手にコミュニケーションが取れることもありますが、それが本来の自分は違う判断の材料にされたら嫌ですよね。
なので、自分でもいまの自分がどんな印象を持たれていて、本当はどういうふうな印象を持ってもらいたいかということを考えてみるといいかもしれないですね。
――ルッキズムを逆手にとって戦略的に自分をブランディングしていく。メイクやファッション、美容医療で自分をプロデュースしていけたら楽しそうですね。
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