Documentary
Documentary #Art

グミは多様性の象徴
「人類がグミから生き方を学べば、きっと世界は平和になるのに」

2021.11.29
バーディー
取材・文:梅中伸介(verb)
撮影:八木竜馬
バーディー 1993年、岩手県生まれ。美容師として就職するも、オンリーワンなことがしたいと、退社し、2017年4月からグミアーティストとしての活動をスタート。グミの魅力をPRしながら、グミを使った創作活動を続けている。日本ハリボー協会会長。
https://twitter.com/birdee_gummy
ポップなカラーと、弾力のある食感が特徴的なグミ。日本のみならず、世界中で愛されている定番のお菓子だ。口にしたことがない人を探すほうが難しいだろう。ただ、そのグミを使ってアーティスト活動を始めようと思った人は、おそらく世界で彼女一人のはず。グミアーティスト☆バーディーさんは、どうして筆や色鉛筆ではなく、グミを手に創作活動をスタートさせたのか? グミをこよなく愛するバーディーさんに、その唯一無二な生き方を聞いた。
バーディー

お弁当の代わりに
タッパーにグミを詰めて勤務先に出勤

「好きなお菓子はグミ!」そう答える子どもも多い。甘くて、カラフルで、形もかわいいポップなおやつだから、それもうなずける。グミアーティスト☆バーディーさんも、かつては、そんなグミを愛する普通の少女だった。

「小学校に上がる前からグミを食べていた記憶がありますが、“ひょっとして、みんなよりもグミが好きなのかもしれない”と、自覚が芽生えたのは、高校生になってからです。近所のコンビニやスーパーに行くと、新発売のグミが出ていないか欠かさずチェックしていました。でも、まだ作品をつくっていなかったので、ただのグミ好きでした」

その愛が偏愛へとエスカレートし始めたのは、美容師として就職してからだという。昼食を取る時間が惜しいほど忙しい職場で、気付けば、お弁当の代わりにタッパーにグミを詰め、持参するようになっていたと語る。

「時間がないなら、パッと食べられるグミを持っていけばいいかと。自分にとっては、そこまで違和感のない行動だったのですが、周りからはすごく驚かれて、そのときに私はただのグミ好きではなく、グミを極めていたんだと知りました。これを機に、より新製品を細かくチェックするようになって、グミの商品知識もどんどん増えていきました」

媒体名の「1」をその場でつくってくれたバーディーさん。つまみ食いしながら、もくもくと作業している。
媒体名の「1」をその場でつくってくれたバーディーさん。つまみ食いしながら、もくもくと作業している。

食卓に並ぶのは、温かい白ごはんとグミ
1日最低3袋は食す生活

ちなみに現在の食生活はこうだ。

「朝食はフルーツグラノーラとグミ。昼食や晩ごはんには、白ごはんにふりかけをかけたものと、おかずとして“グミ”。でも、私的にはグミのほうがメインなので、白ごはんがおかずですね(笑)。食後に口直しとして、グミを食べるときもありますし、小腹が空いたときも、つまみます。もともと甘党なので、しょっぱいおかずは必要ないんです。白ごはんも無理やり食べているような感覚です。毎日3袋は食べているので、年間にすると1,000袋以上は消費している計算になります」

グミへの愛情が高まるのを感じつつも、美容師として働いていたバーディーさんだったが、次第にモヤモヤした感情を抱えながら職場に立つようになっていく。

「サロンでは新人の美容師が見習いとして、受付やシャンプーを担当しながらヘアカットの腕を磨いていきます。ある程度技術が上がったら、自分専用のハサミを購入して、お客さまのカットを担当するようになるのですが、ふと高価なハサミを買うくらいなら、そのお金でグミを買いたいという気持ちが芽生えてきました。もともとカラーリスト志望でもあったし、ヘアカットをするのがそんなに好きではないのかもしれない、と思えてきたんです。自分にしかできない、唯一無二のことをしたいという欲求も生まれてきました」

自身の将来を案じていた、そんなある日のこと。趣味だったアート展巡りの最中に、人生を変える出会いをすることになる。

「アート作品を見ながら、知り合いにグミが好きなことを熱弁していたら、“じゃあ、グミでアート作品をつくればいいじゃん”って言われたんです。その発想はなかったので、“確かに!”と、目の前の霧が晴れる思いでした。アート展を仕切っている知人で、“もしグミで作品をつくるなら、出展してみる?”と、その場でオファーされました」

食卓に並ぶのは、温かい白ごはんとグミ
1日最低3袋は食す生活

好きなことをしていないと
ストレスで自分が壊れてしまいそうな気がして退社を決意

迷うことなく、美容師を辞める決意をした彼女。でも、なぜ成功の保証もない、グミアーティストという道を選んだのだろう?

「もともとストレスを溜めやすい性格で、好きなことをしていないと、自分が壊れちゃいそうな気がしてきます。だから、美容師時代もつらかった。迷ったら、好きな道を選ぶというのが、私の生き方です。人生は一度きりだし、あとから振り返って、後悔はしたくありません。今は自分らしく生きていられるから、とても楽ですね。でも、家族の中で好き放題に生きているのは、私くらい。みんな好きなことを、どこかで我慢しているように見えて、もっと楽に生きたらいいのにって感じます。だから、私が活躍したら、私の生き方を見本にしてほしいですね。母親からも、“楽しそうにやっていて羨ましい”って言われるんです」

グミで作品をつくり、それで生きていく。誰も挑戦したことがない生き方だったが、不安はなかったという。それよりも好きなことを存分にできる、充実感がまさっていたのだ。

「グミアーティストになると決めたのが、4年前で23歳のとき。ちょうど年度末の3月が近かったので、4月1日からグミアーティストを始めると宣言しました。実は“93(グミ)年”生まれ。要するに“グミの申し子”なんです」

好きなことをしていないと
ストレスで自分が壊れてしまいそうな気がして退社を決意

グミの味や形は自由
正解がない多様性をもつおやつから学べること

こうして新たな活動をスタートさせたバーディさんだが、作品づくりに没頭しながらも、存在をアピールするために積極的に行動し始める。

「まずは、コネクションをつくるしかないと思い、グミの製造メーカーに、展示会に来てくださいって片っ端から連絡しました。いくつかのメーカーさんから返事がきたので、逆にびっくりしました。ちゃんと対応してくれるんだなぁと。それと、改めて社会に出て思うことは、“もっと突出した存在にならないとダメ”だってことです。見せ方ももっと工夫して、認知されるようなインパクトがないと注目されないんだなって痛感しています。でも、学校に通っているときは、変なことを言うといじめられるし、息苦しかったのですが、好きなことを自由に発信できるので、その点では、今は生きやすいですね」

現在はグミを使ってアート作品をつくりながら、グミの普及活動も行っている。

「最初の展示会ではファッションにも興味があるので、いわゆる春夏コレクションを意味する“SSコレクション”と名付けて、5月の鯉のぼりなど、季節の事柄をモチーフにした作品をつくりました。今は、毎日のようにある、何かの記念日をモチーフにして、SNSで毎日作品を公開しています」

グミの味や形は自由
正解がない多様性をもつおやつから学べること
グミで構成された、ゾウのオブジェ。持つときは、お腹を優しく持つのがポイント。周囲には、甘い香りが漂っていた。
グミで構成された、ゾウのオブジェ。持つときは、お腹を優しく持つのがポイント。周囲には、甘い香りが漂っていた。

ちなみに作品に使用しているグミは、廃棄予定のグミをメーカーから買い取って使用しているという。最後に、改めてグミに対する熱い思いを語ってくれた。

「グミって、実は正解がない食べ物なんです。どんな形に加工してもいいし、色や味もさまざま。メキシコに行ったときには、唐辛子の入った激辛のグミもあったし、イタリアでは生地やトッピングなど、全部がグミでできているピザも売っていました。だから、グミは自由で、多様性の象徴のような商品なんです。私も正解がないグミを受け入れるような性格になったら、いろんな人と仲良くなれるようになりました。ときどき思うんです。人類がみんなグミ的な生き方をすれば、争いもなくなり、平和になるんじゃないかって。世の中に正解はないってことをグミから学んだし、優等生でいなければダメっていう考え方も、グミによって壊されました」

作品や普及活動を通して、そんなグミから学んだ生き方を伝えたいというバーディーさん。
媒体名の「1」を完成させて、その後もグミの魅力を語り続けた。

グミの味や形は自由
正解がない多様性をもつおやつから学べること
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