10年間ですべて完了
「次は何をしようかな」と楽しみを考える日々
撮影:森山越
最初に就職したのは自身念願の警視庁だったが、結婚を機に退職した。しばらくは家事に専念していたが、自宅に近い建設会社に勤めるようになり、3年前に現在の会社に引き抜かれる。そこでは人事、総務、経理課長を務めている。
電車の窓に映る自分の顔を見てハッとした
「もともと積極的な性格で、何にでもトライしたいという気持ちは昔からありました。それが美容施術をしたことでさらに高まったかもしれませんね」
Nさんが美肌を意識しはじめたのは37歳のときだった。それまではそんなことは考えたことがなかった。
「若い頃はアウトドアやゴルフ、あるいは海に行ったりすることが多かったのですが、当時は日焼けを気にするということはなかったのです。今とは逆で、サンオイルや日焼けクリームなどを塗ってきれいに焼くことが重要だと考えていた時代でしたから」
1980年代前半は確かにサンオイルのテレビCMが多かった。「小麦色の肌」こそが夏の必須アイテムであった時代だ。それがいつしか「日焼け止め」へと社会の思考が推移していった。それはNさん自身も身をもって感じていたことと重なる。
37歳のNさんは自身の肌にシミのようなものを見つけてしまった。
「モヤっとしたシミだったのですけれど、これはなんだっ、と驚きました。なんとかしなければ、と思いその頃から日焼け止めや洗顔、クレンジング、保湿などをきちんと行うようになりました。それらのケアを続けていくと、その効果はすぐに感じました」
これがNさんの美容に対する本格的な最初のアプローチだった。そこからしばらく時間が経ち、次に転機が訪れたのは50歳のとき。その頃、Nさんは乳がんと診断され、半年間ほど放射線治療を行っていた。その病院へ通う電車の中で、窓ガラスに映った自分の顔を見てハッとした。
「目の下にクマがあることに気づいたのです。普段、自宅の鏡で見ているときはわからなかったのに、治療通院時にふと窓に映った自分を見て発見したのです。多分そのときの自分は客観的な目で自分の顔を見ていたのだと思います」
毎日同じ鏡で見る自分の顔というものは、その変化にはなかなか気づきにくいものなのかもしれない。それがきっかけとなり、Nさんは美容医療を真剣に考えるようになった。そしてまず最初に行ったのが、ほうれい線にヒアルロン酸を注入する施術である。
「肌にハリが出ました。事前に自分が描いていたイメージに近く、とても満足しました」
最初のアプローチに成功し、その満足感が次への意識を高めてくれた。2年後には、今度は眼下脂肪の除去手術を行う。約1時間の麻酔を施して手術は行われ、術後は痛み止めの薬を服用した。
「術後には内出血がありましたが、それは化粧をしたりメガネをかけることでカバーしました。その姿で出勤しましたが、術後の違和感はありませんでしたね。この手術結果も満足しました」
このときは事前の医師のヒアリングが丁寧で、それが結果にも現れたのだと感じている。
「この先生なら」という医師が現れて
懸案の鼻の形にいよいよチャレンジ
ほうれい線と眼下脂肪の施術が成功した後、Nさんは父親の介護を経験する。そのときに感じたのは、排泄のお世話の大変さだった。それと同時に自分も老いたのちに介護が必要となった場面を想像した。そして至った結論は、自分を介護してくれる人にそのような思いをして欲しくない、ということだった。そのようなことから、55歳のときにVIOの医療脱毛を行った。
「一番のきっかけは介護でしたが、医療脱毛を行ったことで水泳やヨガなどの日常の場面でも楽になりました」
その翌年には糸リフトを行ったのだが、その施術を担当した医師の手先がとても器用だったことにNさんは注目していた。その結果、「この先生なら」という気持ちが大きくなっていったのである。それは昔から気になっていた鼻の存在感をどうにかできないか、ということだった。
「鼻柱が大きくて、正面から見た顔が好きではなかったのです。この鼻が黄金比を大きく崩していると感じていました」
だが、鼻の施術には躊躇があったので、これまでは踏み切れないでいた。それが糸リフトを施術してくれた医師の手先を見て、「この先生なら鼻もうまく整えてくれるかも」という期待がみるみる大きくなっていったのだ。
それでも勢いに乗ってすぐに、ということはなく、事前に情報を収集し、じっくりと調べていく時間を取った。
「自分でもよく勉強することが大切だと思っているので」
その上で医師と話し合った。やはり鼻の施術をするのは「今しかないかな」とNさんは決断する。そして2023年5月、ようやく懸案の鼻の形を修正したのである。
「私の中ではこれがゴールです。ほうれい線からはじまった10年間の美容医療の最後の総仕上げでした。今後はおそらくメスを入れることはないと思います。ただ、今の状態をキープするために、肌のケアとして現在も続けている肝斑のレーザー治療だけは取り入れて行こうと考えています」
笑顔に自信が持てたら、旅行先でも積極的に動いていた
現在は都内の建設会社で経理、総務、人事課長を兼務するNさん。人事という仕事柄、人に会う機会も多い。
「採用活動は1年中行っているんです。そこで初めて会う人の、見た目の第一印象はとても重要なのです。その印象を持って話を進めて行き、そうするとその人の人柄も伝わってきます」
もちろん、人と会うということは自分もその人に見られているということでもある。美容施術によって、自分の印象にも変化が見られたのだろうか。
「仕事上で施術の効果を直接感じられるということはありません。でも少しは相手に対していい印象を与えているのではないかな、と感じています」
では職場の人たちや知人は、Nさんの変化に気づいているのだろうか。
「何か変えた?基礎化粧品は?ケアは?と言われることはありましたが、それが施術の効果だとは思っていないようです。余談ですが、商談に私が出かけていくと成立することは多いんです。これは施術の効果なのか、それとも私自身が持つコミュニケーション力からなのか」
双方が相互効果で2倍どころか、何倍ものパワーを生み出しているという可能性もある。
家庭での施術効果を聞いてみると。
「主人にも何も言われません。気づいていないのか、それとも気づいていて気づかないふりをしているのか……」
それももしかしたら円満の秘訣なのかもしれない。ご主人とはつい数カ月前に2週間のクルージングの旅に出かけた。そのときに自分の変化に気づいたとNさんは言う。
「以前はガイドブックを見て、あそこに行きたいとか気ままに予定を立てていたのですが、この船旅では地元の人に観光名所などを聞いて出かけていったり、あるいは同じ船で旅している他の旅行者の方ともたくさん会話したりと、これまでの自分とは違った行動を取れるようになっていたのです。これももしかしたら施術によって笑顔に自身を持てるようになったからなのかな、とね」
仕事で重責を担いつつ、オフの時間は週に3回ホットヨガへ通い、50歳を迎えたときは幼い頃に習っていたピアノを再び始めたりと、有意義な時間を過ごしているNさん。
「ヨガを始めてからかなり痩せたんですよ。今は高校時代と同じ体重なんです。同時に生活習慣も改善して、早寝早起き、間食はしないという生活を続けています」
自身の内面や外面だけでなく、取り巻く環境の改善として断捨離も敢行した。
「いるかいらないかを一晩考えるんです。そして思い切って処分するものはズバッといく。部屋がスッキリすると、気持ちまでスッキリするんです」
それもまた美容の悩みを施術によって改善した効果の現れなのか。来年4月に定年を迎えるが、「何をしようかな」と楽しみでいっぱいのようだ。
「限りある時間ですから、常に勉強していたいのです」