輪郭があらわになる風にさえおびえていた日々を、
美容医療が変えた
撮影:小川遼
1982年生まれ。介護福祉士の資格を持ち、職業はナースエイド。17歳の息子、7歳の娘と暮らすシングルマザー。趣味は筋トレ。
看護師の道を勧められたけど、やりたい仕事は「ナースエイド」だった
「よく、道を聞かれるタイプっているじゃないですか。私がまさにそうで、昔から道を歩いているとなぜか、高齢者に話しかけられることが多いんです。子どもの頃からおじいちゃんとおばあちゃんにかわいがられていて、一緒に過ごすことが多かったので、もしかしたら“お年寄り好き”なオーラが出ているのかも……(笑)」
高齢者と話すのが好きで、困っている人や弱っている人を助けたり、お世話をしたりする仕事がしたいと思っていた松井さんは、高校を卒業すると、当時はまだ珍しかったナースエイドという仕事を選んだ。
「入院って誰にとってもつらい体験だけど、嫌な思いだけじゃなく、少しでも楽しい思い出を持って退院してもらいたいと思うんです。入院している方の鬱々としている日常を、少しでも明るくしてさしあげたい」
看護師の多くは医療業務が多忙を極めているため、一人ひとりの入院患者とじっくり向き合う時間をつくることができないのが現状。看護師さんに代わり、患者さんの状況を細かくチェックし、配慮することも、ナースエイドの大切な仕事だ。
「身の回りのお世話をしていると、今日はちょっといつもと違うな、つらそうだな、と分かるんです。でも、忙しい看護師さんに遠慮して、ナースコールを押すのをためらう人も少なくありません。そういう場合は、私たちナースエイドが状況を観察して、看護師さんに正確に伝えます」
入院患者の中にはわがままで、他のナースエイドが怖がるような言動をする人もいる。でもそういう人こそ、じっくり話を聞いて、その人が何を考えて何を欲しているのかを理解して接することで、心を開いてくれるという。20歳の頃に働いていた病院で、そんな松井さんの働きぶりを見た婦長さんから、「準看護師の資格をとってみてはどうか」と勧められたこともあったが、断った。自分がやりたい仕事はあくまでも病気の人のお世話をするナースエイドであって、医療の仕事ではないと当時からはっきり感じていたからだという。
「今の病院の前は、精神科で働いていました。精神的な病を抱えている人とのコミュニケーションは難しいというイメージが一般的にはありますが、私の経験ではそういう方たちも一般の入院患者さんと全く同じで、じっくり話を聞いて何を考えてどう感じているのかを理解すれば心を開いてくれるし、通じ合えるんです」
風が吹いて、髪で隠した輪郭が見えることにすら、おびえていた
やりがいのある仕事に、自信をもって取り組んでいる松井さんだったが、私生活ではルックスに大きなコンプレックスを抱えていた。それは、顔の輪郭。エラが張っているのが嫌で、常に顔の両側に髪を垂らして輪郭を隠していた。風が吹くと髪が乱れて輪郭が見えるので、風にもおびえていた。仕事中はマスク着用が義務付けられているので気にしなくて済んだが、コロナ以前から、プライベートでもマスクが手放せない生活だった。
「エラ以外は特にコンプレックスはなかったんです。高校は女子高で、女生徒にもなぜかモテて、下級生からサインを求められたこともあったし。よくわからないので、普通に名前を書いて渡しましたけどね(笑)。でもエラが張っているというその一点で、いつも自分に対して自信が持てませんでした」
男性から誘われたり、好意を打ち明けられたりしても、「この輪郭を見たらがっかりするのでは」と、ますます自信を失った。好意を持つのは、本当の輪郭を知らないからだと思い、相手が好意を持てば持つほど、幻滅される怖さが大きくなり、落ち込んだ。
「たぶん、私自身が完璧主義だから、ということもあると思います。美容医療に挑戦していなかったら、死ぬまで輪郭を気にして、素顔を知られることにおびえながら生きていたと思います」
筋トレで身体が変わり、キレイへの“やる気スイッチ”が入った
松井さんが美容医療を決意したきっかけの一つが、筋トレだった。ロッカールームで着替えているとき、同僚に「最近、背中にお肉がついたんじゃない?」と指摘された。仕事で1万数千歩以上は毎日歩いているので、下半身にはしっかり筋肉がついて引き締まっていたが、上半身は盲点だと気が付いた。そこで上半身だけの筋トレを始めた。
「そしたら、みるみる身体が変わっていったんです。背中がすっきり、きれいに見えるようになっただけでなく、代謝が上がって全身が痩せて見えるようになったし、風邪もひきにくくなったし、肌もきれいになった。身体って、こんなに変わるんだと思って、やる気スイッチが入ったんです」
その後美容医療にチャレンジしたのは、同僚の看護師の一人が、目の下のたるみを取る施術をしたと職場で話していたのがきっかけ。
「顔がすっきりして、若々しく見えて驚きました。それで興味を持って、いろいろ調べました」
最初にチャレンジしたのは、糸で顔を引き締めるAスレッドという施術。顔の輪郭を変えるのに効果を感じたのは、ボトックスだった。顔の輪郭がキュッと締まって、施術が終わった後、「全然違う!」と感動したという。
「施術した先生も、『すごくうまくいったね!』と喜んでくれました(笑)。その先生も筋トレマニアで、筋トレで話が合うせいもあってか、優しくて親身にアドバイスをしてくれるので、不安はなかったですね」
さらに、同じ先生のアドバイスでヒアルロン酸を頬の少し下に注入する施術をした。頬骨が高いことも少し気になっていたが、ヒアルロン酸を注入して頬をふっくらさせることで、頬骨の高さが目立たなくなった。
「良いことあった?」と聞かれるほど、一日中笑顔が絶えない
施術後は、大きく生活が変わった。
「鏡を見てへこむことがなくなりましたし、いつでもマスクを平気で外せるようになりました。これって、私にとっては大きな変化なんです。鏡を見たときの嬉しい気持ちのまま、一日中仕事をしているので、マスクをしていても笑顔になっているのが分かるらしく、同僚や入院患者さんから『何か良いことあったの?』とよく聞かれます」
ボトックスとヒアルロン酸注入は、メンテナンスとして定期的に行おうと思っている。自分のメンテナンスに気を抜かずにいたいと思うのは、夢があるからだ。
「7歳の長女が成人したら、今とは全然違う仕事にも挑戦してみたいんです。そう、探偵なんかにも興味があります(笑)。全く違う人生を始めてみたくて、その日のためにまずは健康でいなくてはいけないし、見た目のメンテナンスもしっかりやっていきたいですね」