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PRIDE指標ゴールド5年連続受賞のソフトバンクから学ぶ
「すべての人にチャンスのある社会」

2021.12.17 取材・文:有竹亮介(verb) 撮影:小池彩子
2016年に任意団体のwork with Prideが、職場におけるLGBTQ+への取組みの評価指標「PRIDE指標」を策定したことなどがきっかけで、LGBTQ+に関する取組みを進める企業が出てくるようになり、“LGBTQ+フレンドリー企業”という言葉も見られるようになってきた。企業にとっても日本社会にとっても重要な指標の一つとなりつつある「PRIDE指標」において、最高位のゴールドを2017年から5年連続で受賞しているのがソフトバンク。具体的にどのような制度を導入してきたのか、ソフトバンク人事本部の大神田賢翔さんと金 英愛さんに聞いた。

きっと隣にいる“身近な存在”のための変化

ソフトバンクでLGBTQ+に関する取組みがスタートしたのは、2016年10月。社内規程における配偶者の定義が見直され、民法上の婚姻関係が認められている配偶者だけでなく、同性パートナーも含まれるようになった。つまり、同性パートナーの配偶者がいる社員も、結婚休暇や慶弔見舞金などの社内制度の対象となったのだ。

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部、金 英愛さん
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部、金 英愛さん

「2016年の動き出しは、社会的にも早かったと思います。LGBTQ+当事者から要望があったというわけではなく、当社の人事ポリシーである“『挑戦する人』にチャンスを”にのっとった取組みでした。女性活躍や障がい者の雇用も進めていますが、誰もが挑戦できる環境を整えるうえで、LGBTQ+の方への配慮も必須という認識がありました」(金さん)

人事部門主導で動き出したものの、当事者が何を望んでいるかがわからなかったため、トランスジェンダー活動家の杉山文野さんを招き、人事部を対象にした講演会を開催。杉山さん以外にも当事者の方々の話を聞く場を設け、どのようなことで困っているのか、生の声をもとに知っていったそう。

PRIDE指標ゴールド5年連続受賞のソフトバンクから学ぶ「すべての人にチャンスのある社会」

「もともと、社内にも当事者の方はいるであろうという意識はありました。ですが、“日本社会では11人に1人はLGBTQ+当事者の方がいる”というデータ(電通ダイバーシティ・ラボ「LGBTQ+調査2020」より)などを見て、『いるであろう』ではなく『いる』ことを前提に考えられるようになりました。身近な存在として、同じように働ける環境の構築が必要だという認識を人事部門で共有し、今日まで取組みを進めてきました」(金さん)

「多様性」について知り、考えてもらうための取り組み

2016年以降、ソフトバンクではLGBTQ+に関する取組みとして、以下のようなことを行っている。

・社員向けに、LGBTQ+関連の相談窓口を設置

・社内規程の人権尊重および差別禁止条項の前文に「性別、性的指向および性自認に関係なく互いの人権を尊重する」旨を明記

・全社員向けのハラスメント対策のeラーニング教材に「SOGIハラスメント」を追加

eラーニングの漫画教材
eラーニングの漫画教材

・社内の有志でLGBTQ+とアライ(非当事者の支援者)のコミュニティ「カラフル・プロジェクト」を発足し、社内向けにメールマガジンでの情報発信やLGBTQ+関連の映画の上映会などを行う

・多様性(ダイバーシティ)について考えてもらうことを目的とした「ダイバーシティウィーク」を社内で設定し、社員向けのセミナーやイベントを開催

・日本最大級のLGBTQ+関連イベント「東京レインボープライド」への協賛、パレードへの参加

SoftBankの社名が入ったレインボーフラッグ
SoftBankの社名が入ったレインボーフラッグ

「当社は合併や統合を繰り返して成長してきた会社で、社員一人ひとりのキャリアやバックグラウンドはさまざまです。そのためか、LGBTQ+を含む多様性の推進は必要不可欠という意識が自然と発生していて、これらの取組みに対しても社員の皆さんからネガティブな意見を聞いたことはありません」(金さん)

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 大神田 賢翔さん
ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 大神田 賢翔さん

「セミナーや映画の上映会は、強制ではなく自由参加としていますが、毎年続けられるくらいに比較的多くの参加者が集まってくれるので、社内に少しずつLGBTQ+や多様性という言葉が浸透していることを感じます。関心が高い方が賛同してくれている状況なので、今後はより多くの社員へ届けていきたいです」(大神田さん)

「人事部門として制度をつくるだけでなく、LGBTQ+について知ってもらうための活動やイベントを継続することも大事だと考えています。セミナー参加者のなかには、『知らないことばかりだった』『知ったつもりになっていた』という方も非常に多いので、地道な活動を通して、自分にとっては当たり前のことでも相手にとっては当たり前ではない、ということを伝えていけたらと思います」(金さん)

多様性を受け容れていく“風土の形成”

LGBTQ+に限らず、女性の活躍推進や障がい者採用など、総合的な多様性社会の推進を積極的に行っているソフトバンク。その取組みによって、社内が徐々に変わりつつあるという。

「人事部門だけでなく、経営層や社員も巻き込んで『多様性って大事だよね』という話ができるようになってきた感覚があります。当社も通信にとどまらず、さまざまな新規事業に取り組んでいますが、幅が広がればより多くの人の力が必要になります。その際に、年齢や性別、国籍、障がいといったことが壁になるのは避けたいですし、その壁を取り除けば可能性が広がると信じています」(大神田さん)

ソフトバンクではもともと、新規事業を立ち上げるメンバーを公募で選ぶという制度があるそう。性別や年齢、国籍などは関係なく、誰でも立候補できる文化があることも、多様性を受け容れる土台となっているのだろう。

PRIDE指標ゴールド5年連続受賞のソフトバンクから学ぶ「すべての人にチャンスのある社会」

「今後は、多様性を受け容れていく“風土の形成”をさらに進めていきたいですね。また、取組みについて、社外にも発信していけたらと考えています。多様性社会の推進は、一つの会社が頑張れば解決できるものではなく、社会全体の課題なので、互いに協力し合って取り組みたいですね」(大神田さん)

「当社は、スマートフォンなどの製品やサービスを届けるためにお客様と直接コミュニケーションを取ることも多いので、目の前のお客様、もちろん当事者の方々にも幸せになっていただけるような取組みを行っていきたいです。どのようなかたちで届けられるかは模索しているところですが、社内風土の醸成のために地道な活動をしつつ、新たな取組みにも動き出せたらと構想を練っています」(金さん)

最後に、ソフトバンクが目指す“多様性のある社会”について聞いた。

「当社は“『挑戦する人』にチャンスを”という人事ポリシーを掲げていますが、社会全体としても、人と違うことや障がいがあることが理由でチャンスから遠ざかってしまうということがない世の中を目指していきたいですね。その状況が当たり前になったら、全ての人が平等に働きやすくなり、全員が活躍することで、より質の高い商品やサービスが生まれていくと思います」(大神田さん)

LGBTQ+に対する理解や多様性を重んじる文化が広がっていくことが、誰もが活躍できる社会への第一歩といえるだろう。

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取材協力

ソフトバンク株式会社
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