宝くじ当選をきっかけに整形を決意したOLのその後。——『整形シンデレラ』
【漫画や小説の中の美容医療/第七回】

とりあえず貯金をしようと考えるなら、現状に大きな不満がないかもしれません。
大金を手にした時に何に使いたいと思うか、そういったところに本来の欲望が表れるものなのかも。
漫画や小説を通して美容医療を見ることで、“自分に合う施術”や“自分の見た目の正解”を探す本企画。7冊目に紹介するのは、『整形シンデレラ』(シーモアコミックス)です。
本作では、外見にコンプレックスを持ち、卑屈に生きてきた地味なOLがある日宝くじに高額当選します。
その時、彼女は周囲から容姿をバカにされたことを思い出して、美容整形を決意!
美しい顔に生まれ変わり、欲しいものを手に入れますが、その先に待っていたものとは……。
<オススメのポイント>
1.美容整形をして気づく「美人」のメリデメ
2.親に美容整形を打ち明けた時のリアルな反応と主人公の葛藤
3.見た目を変えることで起こった主人公の内面の変化
同じ職場に、“美人な凛”と“美人じゃない凛”がいて…
主人公の橘凛は外見コンプレックスを抱くOL。社内一の美女、貝塚凛と同じ名前という理由で事あるごとに周囲から容姿を比較され、みじめな日々を過ごしていました。
同僚から飲み会に誘われた時も、貝塚凛との容姿の差をイジられてショックを受けます。そんな中、宝くじが当選して美容整形を決意します。
ファッションやコスメに興味があってもブスには似合わない。ずっとかわいくなることを諦めていたのに、美容整形後は思いきりオシャレが楽しめるようになった主人公。
今まで着られなかった素敵な服をたくさん購入して、ヘアやメイクも変えてどんどん垢ぬけていきます。もっとキレイになって、自分をバカにしてきた人たちを見返してやりたい! そう思えば社内で美容整形したと噂になっても平然としていられる。
単純に美容整形して美しくなれるというハッピーなシンデレラストーリーではなく、美容整形したことで職場や両親との関係性に変化が生じたり、複雑な人間模様も描いています。さまざまな試練を乗り越えて、主人公は外見だけでなく心も成長していきます。
親から非難されても、自分のために美しくなりたい!
主人公の橘凛は美容整形をきっかけに大好きなオシャレを楽しめるようになり、人生初の彼氏もできました。美容整形して本当によかったと思っている反面、自分の顔から両親の面影が消えてしまったことに罪悪感も抱いています。
美容整形したいと思う人の多くは、親の呪縛が大きいそう。親から容姿を否定されて育つと、自分の顔を変えたいと強く願うようになってくる。
でも、橘凛は両親からとても大切にされて育ちました。コンプレックスだった大きな鼻は父親譲りでした。美容整形したことで自分の人生は幸せになったけど、両親のためにはブスのままでいたほうがよかったのではと思い悩みます。
生まれ持った顔は、両親から受け継いだもの。だからといって、両親のために我慢して一生みじめな人生を歩みたくはない。
親からもらった大事な体、外見よりも内面が重要だときれいごとを言っても、結局人は見た目が9割。まずは外見で判断されることが多いのが現実です。
嫌いだった顔と決別して、新しい自分として生きるつもりが、もやもやした心の葛藤もあって、なかなかすっきりしない展開。
顔が美しくなって以前より生きやすくなっても、すべてまるっと解決するわけではなくて、悩みは尽きない。それでも、やっぱり美容整形してよかったと思う主人公の、揺れ動く気持ちや葛藤から、目が離せなくなります。
美容整形に興味があっても、親や周りに反対されるかもしれないと一歩を踏み出す勇気がない人には、特に手に取って読んでほしい作品です。
<書籍情報>
『整形シンデレラ』
出版社:シーモアコミックス
著者:四ツ原フリコ
代表作『家政夫のナギサさん』が2020年にドラマ化されて大ヒット。美容整形をテーマにした『整形シンデレラ』は電子コミック累計1,700万DLを突破した話題作に。